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掠奪都市の黄金/フィリップ・リーヴ

掠奪都市の黄金
フィリップ・リーヴ

My評価★★★☆

訳:安野玲
創元SF文庫(2007年12月)
ISBN978-4-488-72302-6 【Amazon
原題:Predator's Gold(2003)


前作『移動都市』から二年後、トムとヘスターはスカベンジャーとなり、亡きアナ・ファンの飛行船<ジェニー・ハニヴァー号>を操って自由気ままに暮らしていた。
冒険家にして作家のペニーロイヤル教授を乗船させていた最中、反移動都市同盟のタカ派グリーンストームに攻撃される。
ジェニー・ハニヴァー号は北の氷原を彷徨う都市に不時着。そこは平和都市アンカレジだった。
かつては優美な都市だったが、疫病で人口が激減し資源もなく、都市を維持するのが困難になっていた。アンカレジの辺境伯フレイアは、都市存続の希望を託して、進路をアメリカに向ける。
アメリカは60分戦争によって死の大陸となったが、ペニーロイヤル教授が冒険して書いた本によれば、いまでは緑なす大地になっているというからだ。

トムとヘスターは飛行船の修理のためアンカレジに滞在することになった。ヘスターは、トムとフレイアが親密な関係になるのが面白くない。ヘスターはアンカレジを飛び出すが、グリーンストームに狙われる。グリーンストームの目的とは?
一方、アンカレジには幽霊が出没するという。幽霊の正体は?そしてアンカレジは、掠奪都市アルハンゲリスクに狙われ、絶体絶命の危機に・・・。

********************

前作から順番に読んだ方がいいです。アンカレジの人々の知らないところで暗躍する組織など、いくつかの組織と人々の思惑が交錯し、物語はテンポよく進行します。テンポのよさと、アニメぽい映像を喚起させるところは、この作者ならでは。
そうそう、今作ではあのアナ・ファンとの関わりが重要になってくるんです。

トムとヘスターは飛行船で仲良く二人で暮らしていたけれど、コンプレックスを抱えるヘスターは素直に幸せに浸りきれない。そんな二人の仲は、アンカレジに不時着したことで亀裂が入るんです。
トムがフレイアと親密になっちゃった!?そしてヘスターは嫉妬するのですが、その嫉妬心が思わぬ結果を招くことに・・・。

前作の主役はトムだったけれど、今作ではヘスターです。
トムはごく一般的な男の子で、主役としてはあまりにも普通すぎてもの足りなかった。でも、この弱肉強食の世界においては、「普通」であることに価値があるのでしょう。善なる心の指標のような存在と言えないかと思うのです。
トムを含む他の登場人物に比べると、作者のヘスターの扱いは厳しい。ヘスターはトムや気のいいアンカレジの人々を守るため、自ら凶戦士のごとく振舞う。それは人のいいトムに罪に意識を持ってほしくないから。ヘスターにとってのトムは、世俗の垢や罪の穢れを知らない「幸福」の象徴のような存在なのでしょうね。

両親を亡くしたフレイアは、跡を継いで辺境伯となり、辺境伯としてのしきたりにこだわる。それは宮殿以外の生活を知らないため、辺境伯であることが彼女自身にとって存在理由になっているからなのでしょうね。世間知らずでわがままなフレイアですが、やがて変わってゆくんですよ。
また、息子を亡くして陰鬱になっているアンカレジの大機関師(エンジンマスター)セーレンも、次第に変わっていきます。死んだような活気を失っているアンカレジの人々は、危難に遭うことで生き生きと活性化し、生き甲斐を見出すわけです。そのあたりの変化が鮮やか。ただ、ヘスターの変化はかわいそうだったけれど。
前作もそうでしたが、今作でもキャラクター造形や扱いが上手いですね。一人ひとりのキャラクターを丁寧に扱っているところに好感が持てます。(2008/6/24)

移動都市
+掠奪都市の黄金

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