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イノック・アーデン/テニスン

イノック・アーデン
テニスン(アルフレッド・テニスン)

My評価★★☆

訳:入江直祐
岩波文庫(1957年6月改版)
ISBN4-00-322261-X 【Amazon
原題:Enoch Arden(1864)


百年も昔のこと、幼なじみで遊び仲間の3人の子どもがいた。船頭の息子だが親を亡くしたイノック・アーデン、港きっての器量良しアニイ・リイ、粉屋の一人息子フィリップ・レイ。
イノックとフィリップはアニイに恋焦がれていた。長じて界隈一の漁師となったイノックが、アニイに求婚。二人は幸せな家庭を築く。
しかし、イノックがケガをしたことにより家系が苦しくなった。その後、イノックは金を蓄えるべく、アニイが引き止めるのを聞かず、東洋貿易の船に乗る。

アニイは三人の子どもたちとイノックの帰りを待ち続けたが、たちまち生活苦に・・・。見かねたフィリップは援助を申し出た。
やがて10年経ったが、その間イノックからの音信は全く途絶えていた。アニイは、イノックは死んだものと諦め、フィリップの求婚を受け入れる。だが、難破して無人島で長年を過ごしたイノックが、やっと救出されて故郷へ戻って来た。

********************

アルフレッド・テニスン(1809-1892)は聖職者の家に生まれ、1883年に爵位を授かる。ヴィクトリア朝時代の桂冠詩人。巻末に年譜有り。

約150年も読み継がれているのだから名作なのでしょう。
原文が載っていないのと英詩に詳しくないのとで断言はできませんが、当時における英詩の主潮の中において、個人の内面に踏み込んだ心理描写と、テニスンの韻律法は意義があるのかもしれません。

例えば、詩風は異なりますがコールリッジの『コウルリヂ詩選』は、なめらかな訳とはとても言えないけれど、原文のリズムを伝えようとする意欲がひしひしと感じられたのです。でも、本書では原文のニュアンスと言うか、リズムが伝わってきませんでした。
スラスラ読めるのだから、なめらかな訳ではあるのだけれど、まるで小説を読んでいるようで、詩を読んでいるという感覚がしなかったんです。小説としてならいいのだけれど、詩としての美しさは感じられませんでした。
そもそも、英詩を日本語で読むことに無理があるのではないのかなあ(かといって、英文を読めて理解できるわけではないのですが)。
それはともかくとして、ストーリーがねぇ。私には名作とは思えませんでした。ハッキリ言ってストーリーは好きではありません。

以下、ネタバレ有り。
ストーリーはいわばメロドラマ。長い歳月の末やっと帰って来たら、妻は彼が死んだと思って他の男と暮らしていたというわけです。そりゃあ、十年以上も音信不通なら、普通はもう亡くなったと思うでしょう。
妻と子どもたちの幸せを知ったイノックは、一人じっと耐え忍ぶ。それをイノックの自己犠牲、男気と受け取ることはできます。
でも、私にはイノックの自己憐憫としか思えませんでした。それ以上のものが感じられなかったんです。
それに、耐えるなら最期まで黙って墓の中まで耐え抜いてほしかった。今際の際で喋ってしまうのだもの。「自分はこんなに苦労しました」とか「これほど自己を犠牲にしました」と自慢しているみたいでいやらしい。

可哀想なのはイノックではなくアニイですよ。死んだかもしれないと思っていた夫が、実は自分の近くにいて、その日暮らしで病に臥せっていたのだから。
彼女は、イノックが死にかけていたとき、自分はフィリップと幸せに暮らしていたという罪の念に捉われるでしょう。それは、意地悪く考えればイノックの意趣返しと受け取れなくもない。

イノックは盛大な葬儀を出してもらいます。彼は英雄的あるいは聖人のような扱いを受けるのです。
一方でアニイは、無謀な夫イノックのせいで、3人の子どもを抱えて生活苦に喘ぎ、しかも十年も待ったわけですよ。しかし、とかく世間は口さがないもの。同情されることもあるかもしれませんが、非常に肩身の狭い思いをすることが予測されるのです。彼女の立場こそ悲劇というものでしょう。
誰も悪くないのに悲劇になるところがこの作品の主調なのでしょうが、あくまでもイノックの立場からしか書かれていないのです。フェミニストでなくても納得のいくものではありません。それが時代性だと言われればそうなのかもしれませんが、私には納得できませんでした。(2006/5/11)

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