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貴門胤裔/イエ・グワンチン

貴門胤裔
イエ・グワンチン

My評価★★★★★

訳:吉田富夫
中央公論新社,上下巻(2002年4月)
上巻:ISBN4-12-003242-6 【Amazon
下巻:ISBN4-12-003253-1 【Amazon
原題:采桑子(CAI SANG ZI)(1999)


貴門胤裔(キモンインエイ)と読みます。2001年、第2回魯迅文学賞受賞。正確には魯迅文学賞には長編部門がなく、第8章「夢(まぼろし)か」に対して優秀中編小説賞が贈られたそうです。

満州八旗を務めた清朝有数の貴族で、北京に住む金(ヂン)一族。
14人の兄弟姉妹のうち作家となった七女・舜銘(シュンミン)を語り手に、一章ごとに肉親一人ずつに焦点を当てています。
同時に一族の人間模様を描き、清朝瓦解の辛亥革命(1911年。翌年から中華民国となった)後の暮らしから文化大革命を経、現代までの激動の時代が語られます。
全体を通しての流れはありますが、金一族を書いた9章から成る連作集。タイトルから難しそうに思ったのですが、案外に読みやすかったです。

葉 広艸今(くさかんむり+今)イエ・グワンチン(Ye Guangqin。1948年、北京生れ)は女性で、元の姓を葉赫那拉(エホナラ)氏といい、清朝で5人の皇后を出した由緒ある満州貴族の末裔。辛亥革命後に葉(イエ)氏と改姓。西太后は作者の祖父の従妹だったそうです。
そんな作者だからこそ、清の朝廷や普段の愛新覚羅溥儀の様子、満州貴族の作法、古美術など貴人の生活や心情を書くことができるのですね。
清朝の民族構成による微妙な優劣感、生まれながらの貴族の鷹揚さ。すべては貴族である作者以外には書けない、自伝的要素の濃い小説です。歴史的資料価値もあると思います。
仮に当時を知っている貴族が他にいたとしても、すでに高齢であるがゆえ、もはやこのような小説を書ける人はいないでしょう。

14人兄弟姉妹はみんな似たような名前なので覚えられなかったけれど、作中で家族でさえ覚えにくいというから、気にすることはないのでしょうね。
老大、老二、老三・・・。大格々、二格々、三格々・・・と覚えて問題はありませんでした。みんな個性が書き分けられているから、1、2章読むと混同しなくなるんですよ。

貴族であるがゆえに、己で人生を決めることがままならない。肉親であればこその憎しみと哀しみと愛おしさ・・・。それも絆。人々の生様は降る雨の如く、簫の音の如く、ときには力強く、ときには頼りなく微かに。風雨に晒される蘆頭哉。
それでも作者は、突き放さず諧謔的にならず、悲喜交々受け入れています。ユーモアとペーソスのバランスがよく、ときにはクスリと笑わせられ、ときにはジンと胸を抉らされました。

いつもなら長々と書くところですが、この小説をこれ以上語るのは無粋というもの。すでに古典としての風格さえ漂っており、ともかく絶品でした。極上の珠玉作!!(2002/10/17)

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