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香料諸島綺談/Y・B・マングンヴイジャヤ

香料諸島綺談
Y・B・マングンヴイジャヤ

My評価★★★★

訳:舟知恵
めこん(1996年9月)
ISBN4-8396-0096-1 【Amazon
原題:Ikan-ikan,Hiu,Ido,Homa(1983)


17世紀の大航海時代、オランダ・スペイン・ポルトガルそしてイギリスの船が、胡椒・ニクズク(ナツメグ)・丁子(クローブ)を求めてインドネシアへやって来ていた。
カウ湾の東湾にあるドインゴジョ村は、元は海賊だったが、いまでは船大工の村として知られていた。ある日、村にテルナテ王国から使者がやって来て、スルタンの命により、ティドレ王国及び後ろ盾となっているポルトガルとカスティリヤと戦うために、船を造るよう要求。
テルナテ王朝とティドレ王朝は、向かい合った島にあり、昔から仲が悪くて諍いが絶えなかった。どちらも隙あらば、相手の王国を潰そうとしていたのだ。
だが、村長(キメラハ)のキエマドゥドゥが断わったので、村は全滅させられる。
生き残ったのはキエマドゥドゥの妻ロマダラ(「空へ誘う鳩」という意味)と、若くして最高の腕を持つ船大工のミオティだけ。二人は焦土と化したドインゴジョ村を捨て、新たな地で暮らし、そこをガムフェラ村と名付けた。

ミオティの船大工の腕は近隣に知れ渡るが、彼は自分だけが儲けようとせず、みんなが平和になるため決して法外な値段を要求したり、戦に使う船を造らなかった。そのため「パンディル(馬鹿正直)」とあだ名される。
ミオティとロマダラは有望な若者たちを村に呼び寄せ、船の造り方や織物の方法を教え、争いのない平和な村を築こうとする。

テルナテの王宮では、スルタンのサイル・バルカット王が、ポルトガル人を追い出してティドレ王朝を潰すべく、ネーデルラント諸州連合のホーラン人(オランダ人)の助力を得るかどうか迷っていた。
宰相ヒダヤットとアリ王子は、ポルトガル人を追い出すために別の異教徒の力を借りることに懸念を示しつつ、最高会議を召集する。彼らの法では、王といえども一存で決めることはできない。ときには決議によって、王を退位させることもある。
そうこうするうちにVOC(オランダ連合東インド会社)が王に取り入る。

ミオティとロマダラは、ロマダラの故郷で巫女の座を降ろされた少女、タラテ・ロラサイを村に迎え入れる。
千のジャスミンに比されるタラテは、ミオティと友好関係にあるジュアンガ・ムラリ親王にみそめられて、やがて親王の妃として王宮へ迎えられる。
ジュアンガ・ムラリ親王はミオティに、VOCの搾取に対して決起するため、船の建造を依頼する。だが、非武装主義で平和を願うミオティは迷う。
VOCによって、サイル・バルカット王はマニラの牢獄に繋がれ、その息子モダファルが王位に就けられた。
商人のカレンバカルは組織を結成し、イギリス人からムスケット銃を仕入れて、VOCに応戦しようとする。だがオランダの戦艦を前にして為す術はなかった。
カレンバカルの元には数奇な身の上となったミオティがいた。そしてタラテも・・・。

********************

インドネシアの作家Y・B・マングンヴイジャヤ(Yusuf Bilyarta Mangunwijaya,1929年、中部ジャワ生まれ)は、作家の他にカトリック神父・フリーの建築家・大学講師・コラムニスト・社会運動家という多才な顔を持つそうです。現在は病気のためスロー・ペースで仕事をしているとか。

インドネシアの史実に基づいたフィクション。17世紀初頭のインドネシアの歴史がわかりました。
テルナテ島はグローブの原産地として知られ、ポルトガルにとっては香料諸島の中心的拠点だったそうです。ポルトガルはタダ同然で香辛料を仕入れ、それらを独占することによって莫大な利益をあげ、リスボンは繁栄を謳歌することができたわけですね。
ところどころに現代人の研究者が昔の島の様子を現地人にインタビューした報告書や、17世紀当時の書簡が挿入されており、現代人が17世紀の島の様子を再現した物語となっているんです。

あらすじを書き出してみると、緊迫感に充ちた怒涛の展開と思われるでしょうが、確かに怒涛の展開なのですが、ちょっと惜しいなと思いました。
一つには誰が主人公なのか判然としないこと。一応ミオティが主人公と思われるのですが、主役としてはおとなしすぎて個性に乏しいんですよねえ。
しかもラストの書簡を読むと判明するのですが、ミオティという個人が主人公とは言い切れないのです。これでは誰に焦点を当てらればいいのか迷います。
意図するところはわかるのだけれど、私としてはラストの書簡はないほうがよかった。もしくはもっと前に挿入するとか。ともかく余韻を残してほしかったです。

もう一つにはミオティとロマダラ、そしてタラテ、彼らが暮らすガムフェラ村の穏やかさ清冽さといったものが、強烈に感じられなかったこと。
平和と凄惨さという明暗のコントラスト、暗い部分はすでに充分なので平和な部分を、もっとクッキリと描き出してほしかった。
全体にコントラストがハッキリしていないので、ストーリーにメリハリが効いていないように感じられました。

書記であり導師でもあるザイナルの言うように、真の敵とは誰か?
テルナテの悲劇は、他部族のティドレと敵対していることにあることはハッキリしています。ティドレを倒すため自ら諸外国の勢力に頼り、それが西欧諸国の勢力を引き入れてしまうことになるわけです。大局的な視野に立てず、内紛に明け暮れているために、自ら西欧諸国の侵略に手を貸してしまう。
ティドレや西欧諸国を敵とするよりも、まず打ち克たなければいけないのは、個人がそれぞれ胸のうちに秘めた「内なる敵」なのでしょう。部族は異なれど、同じインドネシアの人々が憎しみ合っていてはいけないということ。突き詰めると、憎しみからは何も生まれないということではないでしょうか。(2002/12/4)

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