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ウンベルト・サバ詩集/ウンベルト・サバ

ウンベルト・サバ詩集
ウンベルト・サバ

My評価★★★★

訳:須賀敦子
みすず書房(1998年8月)
ISBN4-622-04658-X 【Amazon
原題:Il canzoniere(1961)


ウンベルト・サバ詩集ウンベルト・サバ(1883-1957)は、イタリアはトリエステ生まれの詩人。この詩人を知ったのは、須賀敦子さん(1929-1998)のエッセイでした。

サバの境遇と、トリエステという街並みと歴史的特殊さについては、須賀敦子さんの『トリステの坂道』で詳しく書かれています。
巻末に『トリステの坂道』(抄)が収録されていますが、新潮文庫、白水uブックス、河出文庫の須賀敦子全集(第2巻)と数社から刊行されています。詩と併せて読むと、トリエステの街並みに佇むサバの姿が夢想できるようでした。
『須賀敦子全集 第5巻』(河出文庫)【Amazon】には、サバ詩集が収録されています。

詩は日常の平易な言葉で、気負わず衒いなく率直に語られています。そのためか、素直な心持ちで読むことができました。
決して声高ではなく、つぶやくような、ときには囁くかのような詩群は、どこかひっそりとした印象を受けます。
そこには日々の日常に追われたり、大人になるにつれて見失ったしまったピュアなものが感じられるのです。私には「ピュア」というのが、サバの詩の雰囲気にいちばん近いように思われるんですけど。

素敵な思い(p55~56)

素敵な思いが浮かんだのに、失くした。
清純な思春期の、眠りと
目覚めのあいだをなぐさめる、
あの、めったに戻ってはこない
素敵な思い。

ぼくは、その思いを追っていた、まるで
好き勝手にこちらを引きまわす
女を追うみたいに。道かどを曲がったところで
永遠に見失う、彼女のうつくしさ
みたいに。

世俗の声が、うるさい
呼び声が、素敵な思いを散らしてしまった。
ぼくは探している、盲目の地獄の迷路で。
さして遠くにいるわけでないのだが、ふたたび
会うのは、無理だと知りながら。


「トリエステ」という詩もいいのですが(特にラストの一行が好きです)、上記「素敵な思い」のほうが、いまの自分の気分にあうような感じがしたので選んでみました。
こういう詩に惹かれるようになったってことは、私も歳ですかねぇ。

三つの都市

1 ミラノ
(p240~241)

石と霧のあいだで、ぼくは
休暇を愉しむ。大聖堂の
広場に来てほっとする。星の
かわりに
夜ごと、ことばに灯がともる。

生きることほど、
人生の疲れを癒してくれるものは、ない。


下記は最後の二行が秀逸。逆説的でとても印象的でした。とても平明な言葉で書かれているのに、深遠さがあります。
この二行はどちらかといえば哲学的なので、普通ならば理解するのが難しい内容なのに、この詩ではスンナリ受け止めることができるのだから不思議です。それが詩人の凄さなのでしょうか。

須賀さんの訳からは、サバの息遣いが伝わってくるかのよう。どの詩からも、サバという人が身近に感じられるんですよね。
時代も国も違うのに、なんとなく親しみが感じられるのは、おそらくサバの人柄もあるのでしょうが、翻訳の良さなのだろうと思います。(2011/8/25)

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