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トムは真夜中の庭で/フィリパ・ピアス

トムは真夜中の庭で
フィリパ・ピアス

My評価★★★★★

訳:高杉一朗
カバー画・挿画:スーザン・アインツィヒ
岩波少年文庫(1984年6月)
ISBN4-00-112079-8 【Amazon
原題:TOM'S MIDNIGHT GARDEN(1958)


弟のピーターが麻疹になっため、アランおじさん夫婦に預けらたトム。
夫婦のアパートは邸宅の一室で、昔は立派な邸だったろうけれど、いまは3階に住む持ち主のバーソロミューおばあさんが各部屋を貸し出しています。
邸宅のホールには古い大時計があり、針こそ正確だけれど、時間の数だけ正確に鳴ったことがない。
トムは時計のケースを開けてみたいと思ったけれど、鍵はバーソロミューおばあさんが持っているし、おばあさんに怒られるから大時計に触らないように注意されます。

麻疹にかかっているかどうかハッキリするまで、アパートの部屋に閉じ込められたトムは退屈。深夜、眠れないでいると大時計が13時を鳴らした!? 13時?
トムは大時計を調べるために、深夜の探検に出かけます。
ふと邸宅の裏口を開けてみると、そこには庭園が広がっています。翌朝に裏口を開けてみると、庭園はなくゴミ箱があり、板塀で囲まれた空き地だったのです。
トムは13時になるのを待って、夜な夜なヴィクトリア朝の庭園を探検して、少女ハティと友だちになりました。でも、トムはハティが幽霊だと思い、ハティはトムこそが幽霊だと思っているのです。

********************

トムは決していい子ではなく、かと言って特別悪い子でもない、いたずら好きのごく普通の男の子。自分の話を理解しようとしないアランおじさんを見るトムの目つきに、覚えのある人がいるのでは。
トムはハティとの関係を通じて、少しずつ他者への思いやりと責任感を学び始めます。

緻密な構成で丁寧に書かれた作品なので、弛緩したところがないんですよね。かと言って息が詰まることはなく、ごく気楽に読めました。
背景描写が細部まで丁寧に書かれているので、ヴィクトリアの庭園や町を知らなくても想像することができました。トムのハティが遊ぶ姿も難なく想像できます。
トムとハティの人物描写なにしても、風景描写にしても、ベタベタとした感傷がなく、むしろアッサリしているほど。それがイメージを伝えやすくしているのかもしれません。

トムとハティは、満月が皓々と照らすなか、スケートで凍った川を滑ります。その姿はとても生き生きとしていて、臨場感があるんです。このときばかりは二人とも、時間や邸宅の人々、どんな束縛からも自由になったように感じられてなりません。二人が永遠に、いつまでもどこまでも滑って行きそうな気がするんですよ。

何と言ってもラストがいいですね!
時間の不思議を潜り抜けて出逢ったトムとハティは、一方だけが相手を理解しようとするのではなく、両者ともに歩み寄っていきます。
ハティにはいろんな辛いこともあったろうけれど、子ども時代の歓びを忘れずにいることで、ハティはトムを見い出し、トムはハティと認識します。

様々な隔たりを超えて理解し合う二人。でも、隔たりとは何なのでしょうか?
それは時間そのものではなく、時間の侵食によって磨耗する心情や記憶にあるのではないでしょうか。このことはハティと、彼女の対極に位置するアランおじさんの言動に表れていると思うのです。(2001/11/20)

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非公開コメント

No title

これはもう五つ星ですよね。わたしも大好きです。
このあいだ、わけあって「真夜中のパーティー」の方を読み直したんですが、短編もいいんですよね。

No title

jacksbeansさん

この本は大好きなんです♪やっぱりいい本ですよね!
ほかに「ハヤ号セイ川をいく」も好きですが、「真夜中のパーティー」もいいですよね。フィリパピアスは短編もうまいですね。
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