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アブサン・聖なる酒の幻/クリストフ・バタイユ

アブサン・聖なる酒の幻
クリストフ・バタイユ

My評価★★★★

訳:辻邦生・堀内ゆかり,解説:堀内ゆかり
集英社(1996年10月)
ISBN4-08-773259-2 【Amazon
原題:ABSINTHE(1994)


序章は1871年2月。フランス軍はドイツ軍に勝利を収めるが、生き残ったのは僅か数名のみ。フランス兵のジャン・マルデは無断で隊を離れて、妻子の待つ故郷の村へ戻る。しかし村は貧しく、男たちはアルゼンチンへ出稼ぎに行かなければならなくなった。
ジャンはアルゼンチンではじめは荷担ぎ人夫として働いていたが、酒の知識を生かしてオリジナル・カクテルを作るバーテンとなる。彼は村へ戻らず、ブエノスアイレスで結婚。やがて自分でアブサンを作り始め、近隣で評判となった。
だがある日ジャンは、吸い寄せられるようにニューヨークへと唯一人で向かう。

以下の章からは語り手の青年による、幼少時代の回想録。
第一次世界大戦前後、私(語り手)は南仏プロヴァンスの村ラ・カディエールで少年時代を過ごした。
人里離れた丘には、アブサンの蒸留醸造人ジョゼが一人で住んでいた。少年はアブサン作りに興味を惹かれ、ほとんどの時間を、ジョゼが蒸留するアブサンの工程を眺めていた。ジョゼは、私や両親たちに世界各地の様々な物語を語ってくれた。
1911年、村にアブサンを取り締まる憲兵がやって来た。1915年、フランスでアブサンが全面的に禁止され、ジョゼは誰にも知られることなく何処かへ姿を消す。少
年は長じて、フランスにおけるアブサンの歴史を文献にあたり、ジョゼの過去に触れる。

********************

アブサンとは、ニガヨモギを主体とした数種類以上の香草で作られる、アルコール60~75度のリキュールのこと。
主体はアブサン。緑色の液体アブサンの魅力と、第一次大戦前後のフランスで、アブサンが全面的に禁止されるまで。
アブサン抜きにしてこの作品は成り立たないため、アブサンが飲めないし飲みたいとも思わない私には、アブサンに魅入られた男ジョゼの物語、という見方ができなかったです。
結局のところアブサンの魅力がわからないんですよ。そのためか最後まで読んでも、「だから何なの?」と思ってしまいました・・・。

とはいえ、面白くないわけではないんですよ。面白いです。
全体にファンタスティックと言うか、夢想的なムードがあるんです。どこにもファンタスティックな場面はないし、一見して簡潔で単純明快とさえ言える文体と内容なのに、なぜか夢想的に感じてしまうんです。読後は、「すべては夢かまぼろしか・・・」というような印象を受けました。
作中で、1915年にアブサンは撲滅させられたとのこと。しかしジョゼの時代にアブサンが存在したように、アブサンは幾度も現われては消え、またいつの日か現われるのです。
消えては現れ、消えては現れ、忘れ去られたようでいて、決して廃れることのないもの。それがアブサン。

ジョゼの語る物語に、パタゴニアの女アロエの話があります。
あるとき、どこからともなくアロエという名の踊り子がやって来て、男たちが魅了されてしまう。それに嫉妬した女たちが、アロエを殺してしまうというお話。
実はアロエには「辛苦」という意味があり、リキュールの原料になるのです。つまりアロエの話は、入れ子式になったもう一つのアブサンの物語と言えるのではないでしょうか。(2003.7.10)

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