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時の主人(あるじ)/クリストフ・バタイユ

時の主人(あるじ)
クリストフ・バタイユ

My評価★★★★

訳:辻邦生・堀内ゆかり,解説:堀内ゆかり
集英社(1997年11月)
ISBN4-08-773278-9 【Amazon
原題:LE MAÎTRE DES HEURES(1997)


物語はフランス大使として赴任した、元外交官の手記として語られます。
時代はヴェルサイユ宮の華やかりし頃。巴里から遠く離れ海峡に面した北方に、30歳のゴンザーグが継承した公国があった。公国の宮殿には夥しい数の時計コレクションがあり、公式には218個といわれる。

宮殿の方々に置かれた時計は、「時の主人(あるじ)」と呼ばれる時計職人が管理していた。
時の主人・老いたイェルデンは十数年間、毎夜巡回してねじを回したり修理していたが、ある日突然姿を消す。そして宮殿内のすべての時計が止まった。
次の時の主人は、イタリアから来た30歳に満たないジュゼッペだが、彼は30個ほどの時計のねじしか巻かなかった。一年ほどしてジュゼッペは公国から逃げ出す。

そしてポーランド大公の推薦によって「大将」とあだ名されるアルトゥーロがやって来た。
日没後、大将は巡回する。その寡黙で風変わりな人となりに、ゴンザーグは興味を惹かれ、二人の間に奇妙な友情が芽生える。やがて大将は美しいヘレンと結婚し、女児ロドイフスカが生まれる。
ロドイフスカは美しい娘となったが・・・。

********************

一応あらすじを書いてはみたけれど、書きながら無意味だと思いました。この作品全体にたちこめるトーンが伝わらないからです。
廃れていく公国に漂う空疎感・虚無感・・・。時間の浸食によって崩壊してゆく空間。物理的空間が崩壊するから、客観的時間も崩壊するのでしょう。
現実と非現実の狭間を漂うかのような、どこか実体感の乏しい人々。友情・恋・裏切り、そして陰惨な事件が多々おこります。

けれど、読み手である私にとって、膜の向こう側での出来事のように、感情が剥離した感覚がありました。なぜか感情が伴わない。現実味がないのに、かと言ってまったく非現実的な物語とも言い切れない。幻想的と言ってしまえばそれまでなのですが・・・。不可思議な感触の作品でした。

イェルデンは時を管理・支配しようとして、不毛さに気づいたのだろうと思います。ジュゼッペも時を理解して支配しようとし、やはり不毛であることに気づいたのでしょうね。
でも大将は、時が人の手の埒外にあることを知っているのです。彼の興味は時計という「器機」であって、時という観念ではない。だからこそ長い間、時の主人であり続けられたのだと思うのです。
しかしその大将も、結婚して子どもが生まれ、時を意識せざるをえなくなるのですが、それは公国という空間に流れる時に呑み込まれることを意味するのです。そして、最後に残るは虚無のみ     。(2003/8/6)

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