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新訂 方丈記/鴨長明

新訂 方丈記
鴨長明

My評価★★★★

校注・解説:市古貞次
岩波文庫(1989年5月)
ISBN4-00-301001-9 【Amazon


平安時代末期から鎌倉時代にかけての歌人・鴨長明(かものながあきら,1155?-1216)の随筆。末尾は1212年に筆を置いています。
『大福光寺本影印・翻字』も収録。大福光寺本影印とは、長明直筆(となっているが、賛否両論あるそうです)の写本で、現存するものでは最古の写本らしい。
三大古典随筆の一つといわれるほどなので(他の二つは『枕草子』と『徒然草』)、通読したことがなくても学校で習って出だしだけは知っている人は多いかと思います。

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。


この書き出しはつくづく名文だと思います。有為転変・流転という思想が非常にビジュアルに表現されています。川の流れに世の流れや人生を重ねるのは、日本人独特の感性ではないかと思うのだけれど、どうなのでしょうね。

方丈記では「無常観」が表現されているのですが、その無常を詠った人物が世間の煩わしさを超越して悟りきったかのように早合点してしまうことはないでしょうか。まるで作者が人生の達観者であるかのような印象を受けてしまっているのでは?
ところが最後まで読んでみると、長明の悟ろうとして悟りきれない心境が書かれているのです。

格調高い書き出しを読むと、作者は立派な人だったのだろうと想像されるのですが、どうもそうではなかったようです。
人格はわからないけれど、社会的成功者とは言えないですね。実社会で思うように出世できなかったそうです。出家するのですが、出家しても悟りきれない。老いても人はそうそう変われず、変わろうとして苦悶するところに人間くささがあるんですよ。
この「悟りきれない」ところに人間味が溢れていて、本書の真髄になっているんです。
成功者は一握り。ですが、そういう人は私とはとても遠い存在に感じられるんですよねぇ。その他大勢の私としては、長明に安心感・親近感を感じます。これって私の志が低いのかな・・・。

解説によると、鴨長明は京都の鴨御祖(かものみおや)神社(加茂下社、下加茂社ともいうらしい)の神職の家に生まれる。長明が18~19歳のとき、正禰宜(神官)であった父親が亡くなり、彼は孤児になってしまう。母親とは早くに死別していたのではないかとのこと。
彼は音楽・和歌に優れ、後鳥羽院に目をかけられるのですが、有能な父親を亡くしたことにより、当時の身分制度の中では思うように出世できず、不遇な待遇を囲ったらしい。
孤児となったこと(もっとも18~19歳といったら、当時の社会ではすでに大人扱いでしょうが)、才能があっても出世できなかったことが、長明の性格形成に大きな影響を与えたとか。

また当時の社会状況が、長明を厭世的に気分にさせたことは否定できないでしょう。
ながびく飢饉と疫病に加えて、火災や大地震(1185年。壇ノ浦の戦いから三ヶ月ほど後の出来事。推定M7.4だとか)などの天災に遭っているんです。
都のそちこちには、飢饉や疫病などで亡くなった人たちの屍が築かれ、まさに生き地獄のような有様が描写されています。これでは長明でなくても無常観に襲われますよ。

50歳の春に出家した長明は、大原山(比叡山の麓辺)で過ごした後、54歳ごろに日野(京都市伏見区)に方丈の庵を結びます。いつ頃から書き始めたのかはわかりませんが『方丈記』を著し、1212年の58歳時に筆を置きます。

考えてみると、方丈記というタイトルは意味深かもしれません。
方丈とは、方丈約3メートル四方の草庵のことで、たんなる居室ではなく、元々は出家した僧が悟りを開くための僧房。
人は3平米の庵でも充分に暮らしていける、そのことを世間にアピールしているようにも受け取れ、そこに作者の自尊心がないとは言い切れないような・・・。逆に、そんな庵で暮らすしかない自身を、自嘲しているとも受け取れるのです。
作者はこの両方の感情の間で揺れ動いているように感じられてなりません。彼はプライドと理想の高い人だったのではないのかな。

「たまには古典を読んでみたいけれど、苦手だなあ」と思っていたのですが(今でも苦手だけれど)、短いので最後まで読み通すことができました。短くても古典を一作読み通したことで、満足感・達成感を感じることができました。初めて古典に挑戦する人には、ちょうどいい長さだと思います。(2005/9/12)

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