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狐笛のかなた/上橋菜穂子

狐笛のかなた
上橋菜穂子

My評価★★★★★

カバー画・挿画:白井弓子
理論社(2003年11月)
ISBN4-652-07734-3 【Amazon


戦国時代が終わって平穏な時代。日本を思わせる、とある国の一地方。
隣り合う二つの国の領主、春名ノ国(はるなのくに)の有路(ゆうじ)一族と、湯来ノ国(ゆきのくに)の湯来一族の領主は、若桜野(わかさの)の地の領有とそこを流れる川の水利をめぐって対立していた。
湯来一族の現領主・盛惟(もりただ)は、お抱えの呪者とその使い魔・霊狐に、有路一族の現領主・春望(はるもち)の身内や家臣を暗殺させた。以降、両一族の憎しみは泥沼と化していた。

12歳の小夜は祖母と二人で、村から離れた森で暮らしていた。ある日、小夜は猟犬に追われている子狐を助ける。
小夜が助けた子狐こそ、呪者の狐笛(こてき)によって使い魔にされた野火という名の霊狐(れいこ)だった。
霊狐、それはこの世とカミガミの住まう世との境目にある<あわい>と呼ばれる場所で暮らす、霊力をもつ獣。
里人の出入りが堅く禁じられている屋敷に踏み込んでしまった小夜は、屋敷に閉じ込められるように暮らしている同じ歳ぐらいの少年・小春丸と出会う。

16歳になるころ小夜は、市で大朗(ダイロウ)と鈴の兄妹と出会う。兄妹は大海を渡ってきた<オギ>という技を使う一族で、湯来一族の呪者から有路一族を守ってきた。
大朗は封印されていた小夜の記憶を解く。それは小夜の母親の死の記憶だった。小夜の母親は使い魔こそ持たないが、春望を守ってきた呪者だった。

春望の総領息子・安望が落馬で亡くなったため、湯来一族から匿ってきた第二子の小春丸を跡継ぎに立てる。
だが盛惟と呪者は、春望の有路一族を転覆させようと謀っていた。小夜、野火、小春丸は自らの意思とは裏腹に、両一族の憎しみの環に絡めとられてゆく    

********************

戦国時代の日本を思わせる地方を舞台にした伝奇的ファンタジー。
これもハッピーエンドというのでしょうね・・・。でも、やるせなさの残るラストに、不覚にも目頭がうるうる。
ハッピーエンドと思うのは、小夜が誰の意思でもない自分自身の意思で選択したから。
やるせなく思うのは、こんな結末になるとは思っていなかったのと、おそらくほかに選択肢がないだろうから。でも、これが最善の解決策だとは思えないんですよね。
小夜の選択は理解できるのです。限られた選択肢のなかで、利用されず傷つけ傷つけられず、自分自身の生き方を選ぶとしたらこうなるのかとは思うんです。

ラストの情景が美しいがために、一層哀しさがつのる。
春霞に包まれたような淡い情景は、幸福感を思わせるのですが、他の人々の手の届かないところにあります。その隔たりが哀しい。

怨みは源が見えているうちに絶たなければ、憎しみが凝り固まってしまうという小夜の母親・花乃の言葉が印象的でした。
この物語は、血縁である二つの一族の憎しみの連鎖を、いかして絶つかにあります。
報復は憎しみしか生まない。報復の繰り返しが続いたならば、源を絶とうが絶たなかろうが、もはやどうにもならなくなる。
花乃の言うように、時は戻せません。現状を変えるしかわたしたちにはできない。これはやはり、現実の紛争に対する作者のメッセージだろうと思われます。

春望のように政治的な判断を下す立場の人間でも、利権はもとより私怨に左右される。
春望(はるもち)の小夜への想いみられるように、政治的判断の前に、いかに個人が犠牲とされてしまうか(春望は考えただけで、実行していないけれど)。
関係者が増えれば増えるほど、憎しみの環は拡がってゆく。その関係者は政治的に利用される。しかもその政治的判断が最終的な解決策ではなく、決して良い結果をもたらすわけでもない。
それがわかっているにも関わらず、政治のためには個人が犠牲になっても仕方ないとする論理は、間違っていると思うのです。(2004/6/8)

備考:2006年11月、新潮文庫化【Amazon

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