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両棲人間/アレクサンドル・ベリャーエフ

両棲人間
アレクサンドル・ベリャーエフ

My評価★★★☆

訳・解説:飯田規和
挿画:池田龍雄
あかね書房・少年少女SF文学全集(8)(1971年12月)[絶版]
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アルゼンチンの漁師たちの間で、海に棲む怪物「海の悪魔」の噂でもちきりだった。彼らが言うには、原因不明の事故で沈んだ船や、網が破れたり獲った魚が消えてしまったりするのは、海の悪魔の仕業だとか。
真珠貝を捕る漁船の船長ズリダは、海の悪魔を捕まえて真珠を獲らせようと考える。
ズリダはインディオで真珠捕りの名人バルタザールと一緒に、海の悪魔を捕獲しようとするが失敗。そのうち、海の悪魔が入り江に面した要塞に出入りしていることを突き止める。
要塞は、天才的な外科医として有名なサルバトール博士の研究所だった。

博士は医者の仕事を辞めたが、インディオたちの診察だけを続けつつ、入り江の研究所で研究に専念していた。
バルタザールの兄クリストは研究所に潜伏し、海の悪魔がイフチアンドルという青年であることを知る。そのイフチアンドルは、博士によって魚の器官を移植された「両棲人間」だった!
イフチアンドルはクリストに連れられて、初めて町に出た。そしてグチエレといううら若き女性に惹かれる。グチエレもまた。
彼女はバルタザールの娘で、ズリダに執拗に結婚を迫られていた。そんなイフチアンドルとグチエレに、ズリタの魔手が迫る。
イフチアンドルはようやくズリタの手から逃れるが、博士の研究が犯罪であると訴えられてしまい、博士と共に裁判所の監獄に囚われてしまう・・・。

********************

アレクサンドル・ロマノヴィチ・ベリャーエフ(1884-1942,ロシア生れ)はソ連時代のSF作家。プロフィールによると、神学校を卒業して弁護士や俳優業などを経て、子どものための戯曲を創作。
1925年からSFを書き始め、死ぬまでに50篇以上の作品を発表したそうです。本作は1928年に発表。
解説によるとベリャーエフは1915年からおよそ5年間、脊椎カリエスという難病に罹り、まったく動くことができず、体にギプスをはめベッドに釘付けされたそうです。この闘病生活が、人体改造をテーマとする創作に向かわせたのだとか。

イフチアンドル(ギリシア語で「魚のような人間」という意味)は生れて間もなく、サルバトール博士によって両棲人間に改造されます。
彼は水中では自由に過ごすことができるけれど、汚れた水中や陸上に長く居ることはできません。彼は陸上の生活をほとんど知らないけれど、それでも満足して生きてきたし、自分の居場所は広くてきれいな海にこそあると思っているのです。
そのイフチアンドルを陸上に引き留めるのはグチエレと、強欲なズリダ。

この物語、主役は確かにイフチアンドルなのですが、影の主役はサルバトール博士だと思うのです。もし博士という存在がいなかったならば、この物語は薄っぺらくなってしまったと思うのです。
博士は貧しいインディオを無償で診療してきた、いわば人徳の士と言えるでしょう。その研究は倫理的に許されることではないのですが、それでも一概に博士がマッド・サイエンティストだとは言い切れないところがあるのです。
博士は人体を改造することによって、人類の可能性を実験してきた。しかし、実験の成果が悪用されることを恐れて公表しなかった。
博士の考えは、研究の成果が人類のために役立つことにあるのですが、現実は理想から程遠いことがありありと伺えます。ズリダはイフチアンドルを金儲けのために利用しようと虎視眈々と狙っている。また神父はイフチアンドルと博士を、神を冒涜した罪により抹殺しようとするのだから。

この作品に漂うもの悲しさの原因は、ラストでバルタザールが去りし者の名を呼び叫ぶ姿よりも、イフチアンドルを受け入れない、あるいは逆に利用しようとする利己的な人間のいる世の中にあるのではないでしょうか。サルバトール博士を通じて、作者が世の中をどう見ているのか、といった社会認識にあると思うです。
作者の視線はシニカルとかペシミスティックというだけのものではなく、現実をシッカリと見据えた上でのことだと思われます。そうした点がこの物語を、単なるジュヴナイルにとどまらない作品にしているのではないでしょうか。

かつて『両棲人間第1号』というタイトルで、数社から別訳で刊行されていたそうですが、現在はすべて絶版。
もっとも新しいのは1987年6月、講談社青い鳥文庫から木村浩訳『イルカに乗った少年 両棲人間第1号』ですが、現在は絶版のようです。青い鳥文庫では幼年向けの訳になっているため、飯田訳とは雰囲気がかなり異なります。(2004/7/13)

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