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髑髏蛾/アレクサンドル・ベリャーエフ

髑髏蛾
アレクサンドル・ベリャーエフ

My評価★★★☆

訳:深見弾
創元SF文庫『ロシア・ソビエトSF傑作集(下巻)』所収(1979年4月)
ISBN4-488-65702-8 【Amazon


1912年、40歳を満たずに教授となった昆虫学者でフランス人のジョゼフ・モレルは、ブラジルのアマゾン上流へ学術調査のために踏み込んだ。アマゾンには未発見の種が<数千あるいは数万と無尽蔵に棲息していた。
モレルは新種を発見し、学問上の名声を得ることを夢想する。そんなモレルの目前を、巨大な蝶「髑髏蛾」が飛んでいった。
斑紋はこれまでに見たこのない、全く新しい品種だった。モレルは髑髏蛾を捕まえようとするが逃げられてしまう。
そうこうするうち、モレルは密林で迷ってしまう。彼は人界に戻るまでひとまず木の上に小屋を作り、昆虫を観察・採集して生活する。だが、いつしか彼は文明世界へ戻る意欲も、文明世界での記憶も失くしてゆく。

ハンターで素人博物学者のサバチエとガイドのジョンは、密林で一人の老人を発見した。老人は密林で迷ってから15年以上は経つらしい。老人の植物や昆虫に関する知識は驚異的なまでに豊富だった。
サバチエは老人の発明や知識をもってすれば産業を創出できると考え、彼を文明社会へ連れ戻そうとする。

********************

『ロシア・ソビエトSF傑作集』(上下巻)はアンソロジーです。2003年9月に再版されたので読むことができました。
この短篇は1929年発表とのこと。この文庫の趣旨は「SF傑作集」ということなのですが、私の感覚ではモレルの発明品をSF的と言えなくもないけれど、いわゆる秘境ものという感じです。
冒険小説とも言えるのかもしれませんが、私はシチュエーションよりもモレルの精神活動に注目して読んだので、冒険小説とは言い切れないと思いました。

途中までは密林版ロビンソン・クルーソーかと思ったけれど、違ってました。サバチエとジョンが発見した老人は、もちろんモレルです。このときのモレルは、すでにロビンソン・クルーソーではない。
読みどころは老人となったモレルの言動、彼の精神活動にあります。彼は髑髏蛾に魅入られたというより、研究そのものに魅入られたといった感じなのです。
発表するあてもないのに、異様なまでの情熱をもって研究に没入する姿は狂気的ですらある。天才と狂人は紙一重という言葉が思い浮かびました。

サバチエは善意はあるのですが、その善意には自己の利益のためもあるんですよ。欲得ではなく純粋に研究に勤しむモレル。対比的な存在のサバチエ・サバチエは、まるで文明社会人を代表しているかのよう。でも、そうしたところを強調せずに、匂わせるだけで終わっている作者の手腕がにくいですね。
70年ほど昔に書かれたにしては古くささはなく、特に老人モレルに見られる倫理観は現代的ですらあって、それが強く印象に残りました。(2004/7/31)

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