スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

まぼろしの小さい犬/フィリパ・ピアス

まぼろしの小さい犬
フィリパ・ピアス

My評価★★★★

訳:猪熊葉子
カバー画・挿画:アントニー・メイトランド
岩波書店(1989年7月)
ISBN4-00-115506-0 【Amazon
原題:A DOG SO SMALL(1962)


ベンは誕生日に、田舎のおじいさんから仔犬をもらう約束をしていました。
ところが届いたプレゼントは、とても小さな犬。刺繍で作られて額に入れられた絵だったのです!その絵は亡くなったおじさんが外国から持ってきた絵で、おばあさんが大切にしていたものでした。

けれど、ベンは絵ではなく、本物の仔犬がほしかった。あまりにもガッカリして、贈ってくれたおじいさんを憎らしく思うほどでした。
本当は、都会のロンドンでは犬を飼う場所も散歩させる場所もないので、どうしても犬を飼うことはできないのです。

絵の仔犬は「チキチト・チワワ」といい、チキチトとは「とてもとても小さい」という意味です。
しかし、ベンは絵に興味がなかったので、しばらくすると失くしてしまいました。それからというもの、眼を瞑るとチキチトが見えるように・・・。
チキチトは元気よく駆けずり回り、とても勇敢で恐いもの知らず。ベンはチキチトに会うために、誰にも邪魔されないよう一人きりで、始終眼を瞑って過ごします。
でも周りの人たちにチキチトが見えるはずもなく、お母さんはベンの様子がおかしいのを心配していました。その矢先にベンは・・・。

********************

犬がほしくても飼ってもらえないベン。ほしくてたまらないものをあきらめなければいけない気持ちは、よくわかります。ましてや、おじいさんと約束までしたのだから。
そんなベンが、とても小さい幻の犬チキチトに魅せられていきます。しかし所詮チキチトは幻にすぎず、ベンは想像上の犬で我慢せざるを得ないわけです。

実のところ私はベンを好きではありません。ベンは自分の内にこもって、他の事柄や他人に対して、まったく関心を失っているからです。
犬を空想するのが悪いということではなくて、もっと違う楽しみを自分で探し出せないのかなあ、と思っちゃうんですよねえ。
頑固で融通のきかないベンは、可愛げがないんですよ。でも子どもはそんなものかな。それを一途さと言うのかもしれない。

活動的な場面がなくベンの内面描写が多いので、正直に言って退屈気味の物語と思っていましたが、ハムステッド自然公園でのラストを読んで気が変わりました。
ラストがとても巧いのです!
ベンは理想と現実とのギャップに、どうやって折り合いをつけるのか?幻ではなく現実に対して、どうやって関わっていくのか?その心境の変化がとても自然で鮮やか。ピアスならではの鋭い洞察力が発揮されています。
すべてはこのラストのためにあるのではないか、そう思います。

ベンの祖父母の家の近くにセイ川があり、「ハヤ号」がチラリと登場!にくい登場のさせ方ですねぇ。ハヤ号は健在なり。
本作は『ハヤ号セイ川をいく』より後の出来事だということが間違いなくわかります。(2002/12/14)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。