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コーリャ 愛のプラハ/ズデニェック・スヴェラーク

コーリャ 愛のプラハ
ズデニェック・スヴェラーク

My評価★★★☆

訳・解説:千野栄一
集英社(1997年5月)
ISBN4-08-773268-1 【Amazon


時代背景は1968年のソ連を主体としたワルシャワ条約機構軍によるチェコスロヴァキアの占領前後から、1989年11月のビロード革命による社会主義体制崩壊までのチェコ。コーリャとはロシア人の男の子ニコライの愛称。

かつてはチェコ・フィルハーモニーのチェリストとして活躍したフランチシェク・ロウカは、弟の亡命事件もあって辞め、いまでは葬式での演奏と墓碑銘の修復をして日々の糧を得ていた。
そんなロウカに、大金を掴むチャンスが転がり込む。ロシアから亡命するためにチェコスロヴァキアの市民権を欲しがる女性が、偽装結婚してほしいというのだ。ロウカは迷った末に話を受ける。
相手の女性ナジェージュダは、5歳の男の子コーリャを伴っていた。

しばらくしてナジェージュダは、コーリャを置いて西ドイツにいる男のもとへ亡命。ロシア人は西側へは行けないため、チェコ国籍を必要としていたことが判明。
子どもは赤十字に嘆願書が出されると西側へ亡命できた。だが、コーリャの面倒を看ていた人が亡くなったので、嘆願書が受理されるまで、ロウカが子どもを預かることになった。
こうしてチェコ語しか話せないロウカと、ロシア語しか話せないコーリャの生活が始まる。

********************

ロウカの母親は、コーリャを含むロシア人への敵愾心を隠そうとしない。市民の反応も同様で、ロシア映画が中止になって喜んでいる。
でも、ロウカはコーリャのためにロシア映画を上映させてもらう。そうして生活していくうちにコーリャは片言ながらもチャコ語を話すようになっていき、二人に交流が芽生えます。心温まる物語でした。

文体が秀逸。カメラワークによって細部や人物を映していくような印象があり、カメラでは映せない内面の葛藤、つまり心理描写がないんですよね。でも、登場人物の内面は言動や仕草、情景描写で表現され、それだけで充分に推し量ることができます。これはヘタな心理描写より数段に手応えや説得力があり、安っぽい同情の戒めに功を成しているように思われます。
カメラワークのようなと言ったけれど、それもそのはず著者はチョコの俳優・脚本家・劇作家なのだそうです。この作品がシナリオのように感じられるのも納得です。

作者は「われわれ」と語りかけます。するとロウカとコーリャを、カメラを通して一緒に観る監督(作者)と観客(読者)の立場に置かれるかのよう。さらにそれらを意識しつつ読む自分がいるという、ちょっと複雑な構造が意識されます。
この構造による、作品との距離感とカメラワークのような文体が、全篇になぜか静謐さをもたらしているような気がしてなりません。この静謐さは、西欧とは異なるように感じました。

1996年に同タイトルで映画化され、同年の東京国際映画祭でグランプリ及び最優秀脚本賞を受賞。1997年アカデミー外国語映画賞、ゴールデン・グローブ賞を受賞。
実のところ、本を読むよりも映画を観たいです。プラハの街並みがバックだと、さぞや雰囲気のある物語だろうなあと思うんですよ。(2001/2/18)

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