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エルフランドの王女/ロード・ダンセイニ

エルフランドの王女
ロード・ダンセイニ

My評価★★★★★

訳:原葵
カバー画:山田章博
沖積舎(1991年10月)
ISBN4-8060-3026-0 【Amazon
原題:The King of Elfland's Daughter(1924)


アールの郷には国主(いわゆる領主)はいるが、政は村人の代表である評定衆が決定していた。
評定衆たちはアールの郷の名を世に知らしめようと、現在の国主に変わり、「魔」の国主に治めてもらおうとする。つまり国主の息子アルヴェリックが魔(妖精)の妻を娶り、その子どもに治めてもらおうというのだった。

アルヴェリックはエルフランドでの危険を考えて、魔女ジルーンデレルに頼んで、魔力を秘めた剣を作ってもらった。
そうして彼はアールの郷とエルフランドとの境界である黄昏の国境を越えて、リラゼル王女を伴って戻って来た。

やがてアルヴェリックとリラゼルの間に「オリオン」という息子が生れた。しかし、エルフランドに焦がれるリラゼルは、アルヴェリックとの行き違いから自分自身の国へと戻ってしまう。
アルヴェリックはリラゼルを探しに黄昏の国境へと向かうが、そこにはエルフランドがなかった!?
エルフランドの王によって、どこかへ移動してしまったのだ。彼はエルフランド探索の仲間を募り、地の果てまでもの旅にでる。

月日が経ち、成長したオリオンは、エルフランドの生き物であるユニコーンを狩った。
ユニコーン狩りによってオリオンは、評定衆が待ち望んでいた「魔」を使う国主と認められる。しかしそれが、評定衆にとっての皮肉な結果をもたらす・・・。

********************

境界こそあるものの、いまだ人間と魔(妖精)、現実と魔法が渾然と存在する黄昏の世界。
エルフランドは異世界としてハッキリと区分されているのではなく、人間界と隣接しています。
ストーリーにはそれほど奇抜さがあるとは思えないし世界構築も曖昧なのですが、物語全体を包む黄昏の世界は、私がファンタジーたらんとイメージする色彩そのもの。

エルフランドは現実世界と違い、あくせく働かずともよく老いることのない時間のない世界、つまりユートピアでしょう。
しかし、評定衆たちは魔に憧れながら恐れています。ニヴとゼンドは、エルフランドの素晴らしさを感知したがゆえに否定します。リラゼルはエルフランドとアールとの、二つの世界に焦がれているのです。このようにエルフランドを軸に、感情の相克・葛藤が描かれているのです。
作者は、限りはあっても現実世界で堅実に生きようとする感情と、美しくはあっても限りのない緩慢なユートピアを求める感情を、実にバランスよく配していると思います。
ところどころ作者によって、物質文明と比較された語りが挿入されているので、物語世界から現実に引き戻されてしまうのですが、物質文明とエルフランドとの比較は、つまるところ物質文明の恩恵を認めつつも批判してのことではないかと考えます。

美しい黄昏のエルフランド。けれど美しいだけの物語ではなく、人間というものや物質文明について考えさせられます。そうした深みが、いまでも読む者を魅了する理由ではないでしょうか。ともあれ、ファンタジーでいちばん好きな作品になりました。(2001/6/13)

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