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或る失踪/シン・ギョンスック

或る失踪
シン・ギョンスック

My評価★★☆

訳:具末謨
紀伊国屋書店・アジア女流作家シリーズ(1997年7月)
ISBN4-906510-97-3 【Amazon

収録作:或る失踪/冬の寓話


『アジア女流作家シリーズ』の最終巻(全5巻)。
韓国の女流作家シン・ギョンスック(1963年、全羅北道出身)の作品集。両篇とも民主化を求める学生のデモによる家族への波紋を、家族の側から書いた作品。残された家族の悲哀と、そういった現状で生きる女性たちの生き方を描いています。

2篇とも若い女性が主人公のためか、それとも作者自身の若さのためか、感傷的な傾向がありました。
また、政治的な背景が書き込まれていないので、若干わかりにくかったです。作者の意図するところは政治そのものについてではないのでしょうが、政治的な部分や韓国社会の慣習といった部分が書き込まれていないので、韓国における女性の待遇や境遇がわかりにくかった。2作品に登場する女性たちが、一般的な女性像なのか、それとも特殊な女性たちなのかが判断がつきません。

感情に訴えるのがいけないと言うわけではないけれど、ハッキリ言えば作者は感情に流されすぎ。
作中の人物は感情的であってもいいけれど、作者までが感情に流されると起因がどこにあるのかわからなくなってしまう。もっと冷静に社会状況を分析して、作品に織り込んでほしかったです。

或る失踪
地下の部屋を間借りしている娘ヒオック。
兄が死んだことを認めることのできない母は、気が狂って亡くなってしまった。ヒオックはやさしくて優秀だった兄と、母の思い出の詰まった家を出て、一人暮らしを始めたのだ。
朝、二人は目覚めたが地下の部屋は暗くて湿気がこもっている。この湿度では、外には雪が降っているようだった。残された娘ヒオックと父の孫は、母と兄のことを考え、自分たちの将来に暗然とする。

********************

兄が亡くなったことで母親も亡くなり、思い出の詰まる自宅を出て、地下室の部屋を間借りするヒオック。その部屋は陽も射さず湿気がひどい。また兄のこともあって、ヒオックは鬱々とした気分を抱えているのです。
そこへ訪ねて来た父親・・・。

老いたち父親を残して自宅を出たのもヒオック自身で決めたことであり、地下室はやめたほうがいいという上司の忠告を、経済的理由で無視したのもヒオックです。それで鬱々とした気分になって自分を憐れんでいるわけです。
父親のことも頭をよぎるけれども、結局は自分のことしか考えていないんですよね。
そんなヒオックにどうやって共感なり同情すればいいのか。私は父親の方がかわいそうでした。

冬の寓話
学生時代に街頭デモに参加したため、後に友だちは就職できても、自身は定職に就くことができなかったヒョッス。
学生時代から彼と付き合っていたミョンヘは、いまでは教師をしている。彼女はヒョッスとの結婚を考えていた。ヒョッスは職を転々としていたが、ある日ふいに消息が途絶えたきり連絡がない。ミョンヘの元に彼の老いた母親が訪ねて来る。だが彼女には励ますべき言葉がなかった。

ヒョッスとミョンヘの親友のチャンギュは、ヒョッスの行き先を知っていた。事故を起こして、刑務所で4年の刑罰をくらっていたのだった。
ミョンヘは彼と面会する。彼から何も知らない母親に、自分は外国船に乗っていて数年したら戻るから、と伝言を頼まれる。彼女は列車とバスを乗り継いで、彼の母親が住んでいる雪深い村へと向う。その日は、彼女の見合いの日だった。

********************

ミョンヘはヒョッスの母親に会いに行きながら、学生時代からの出来事を回想する。回想の部分が断片的で細切れに挿入されていて、一瞬何のことについて回想しているのかわかりにくかったです。
時系列に沿っていないこともあるけれど、初めのうちミョンヘの慕っているのが、チャンギュなのかヒョッスなのかハッキリしないんですね。そこにミョンヘの母親の人生も挿入されるんです。さらに息子ヒョッスの、老いて病に冒された母親も。
ページ数のわりにエピソードが詰め込まれすぎでいて、それがちょっと整理されきっていない印象を受けました。

この作品は、夫や息子といった男性に翻弄される女たちの物語ということになるのかもしれませんが、彼女たちのような存在が、韓国では一般的なのか、それとも特殊なのか判断つきかねます。
それはともかくとして、ミョンヘが憐れんでいるのはヒョッスではなくて、老いて病に冒された彼の母親でもなく、自分自身ではないのかと思う。そしてヒョッスもまた、自分を憐れんでいるのです。
韓国における学生デモ参加者への処遇がどうなっているのかわからないため、ヒョッスの生き方は、彼の性格によるのか、それとも学生デモに参加した者たちの一般的な境遇なのか判然としなかったです。私は、たぶん彼の性格に因るんじゃないのかと思うんだけれど。(2002/12/27)

アジア女流作家シリーズ(全5巻)
斑布曲(バンブーチゥ) 彩りの道(孫愛玲,シンガポール)
廃墟の上に(テーハ・スリ・ラハユ・プリハトミ,インドネシア)
魔術師(グエン・ティ・トゥ・フェ,ヴェトナム)
世紀末の華やぎ(朱天文,台湾)
+或る失踪(シン・ギョンスック,韓国)

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