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白薔薇と鎖/ポール・ドハティ

白薔薇と鎖
ポール・ドハティ(ドハティー)

My評価★★★☆

訳:和爾桃子
ハヤカワ・ポケットミステリ(2006年3月)
ISBN4-15-001785-9 【Amazon
原題:The White Rose Murders(1991)


16世紀イングランド。齢0歳をとうにすぎてもかくしゃくとする荘園領主サー・ロジャー・シャロットは、教区牧師に若い日の冒険を洗いざらい語って筆記させる。

ならず者のシャロットは危うく絞首刑にされるところを、同じグラマースクールで学んだベンジャミンに救われた。シャロットはベンジャミンに仕え、世間知らずで善良な主人を守ろうとするのだが、為すこと為すこと裏目に出る始末。
ベンジャミンは、ヘンリー八世(はったり王ハル)の信任厚いウルジー枢機卿の甥だった。枢機卿は甥のていたらくに怒りを隠せない。そしてベンジャミンとシャロットに密偵の仕事を与える。
ヘンリー八世の姉マーガレット・テューダーは、スコットランド王ジェームズ四世に嫁いだが、ジェームズがフロドンの戦いで死に、彼女は未亡人になった。
彼女はスコットランドから追放され、ロンドン党内の館に滞在しているが、スコットランドに帰還したいという。

ジェームズは謀反人のヨーク党と関わり、そのヨーク党はいまは白猪党(レ・ブラン・サングリエ)という秘密結社となって、イングランドを転覆すべく陰謀を企んでいた。
そのための有力な情報を、ロンドン党に捕らえられている故ジェームズ王の侍医セルカークが握っている。セルカークは白猪党と見なされていた。
ベンジャミンとシャロットの任務は、セルカークから情報を聞きだすこと。

だが、セルカークは密室の独房で、何者かに毒殺されてしまう。ロンドン、スコットランド、パリと、ベンジャミンとシャロットの行く先々で事件が起こる。
犯人は誰か、どうやって毒を盛ったのか?ヘンリー王と枢機卿が欲しがっている、セルカークの情報とは何なのか?

********************

訳者あとがきによると、ポール・ドハティは1946年に北ヨークシャー生まれる。オックスフォード大学へ進み歴史学博士号を取得。論文テーマは「中世英国のエドワード二世とイザベラ王妃」。ロンドン市内の学校長を本業とし、学術書も含めて多数の著作があるそうです。
いくつかのペンネームを持ち、そのうちの一つマイクル・クラウンズ名義で発表されたのが、本作ロジャー・シャロット・シリーズ。中世英国史や古典語、文学に詳しく、歴史検証では高い評価を得ているとか。
本書でも英国中世史や中世文学に博学なことが窺えます。ときには16世紀前後頃の中世文学の文体を取り込んでいたり。そのことがわかってなじめる人はいいのでしょうが、そうでなければ「なんだこの文体は?」と思われるかもしれません。

この作品の面白さは怪男子ロジャー・シャロットという特異なキャラクターにあるでしょう。
容貌魁偉で女好き。嘘つきで盗人で、何度も処刑台に吊るされそうになる。「そこまでやるか」という悪行を平気でやってしまうんです。大胆かと思えば小心だったり、抜けているかと思えば小狡い。極悪人というより小悪党タイプ。でも、妙なところで正義感があったり、純真なところがあったりして憎めない。彼なりに善悪の基準があるのですが、それが一風変わっているんですね。
また、善良で世間知らずのお坊ちゃんと思われるベンジャミンは、見た目とは異なる一面を持っています。そう言えば事件そのものが見た目どおりではなく、いくつかの様相を持っている。何事も見た目どおりではなく、裏があるということ。

歴史ミステリと銘打たれているのですが、ミステリと言うよりも虚実混交の歴史小説と言った方がいい。ミステリ読みの人にはもの足りないと思うんですよ。ハッキリ言ってトリックはいただけないので、ミステリ通にはウケないのでは。
でも、私にはトリックがお粗末でも許せます。トリックがどうこうという作品ではないと思うから。
そもそも作者の書きたかったのは、ミステリではなく歴史ではないのかな。正史の裏を、奔放な想像力をもって描いた歴史小説という印象を受けるからです。
16世紀、宮廷がその存続を賭けた決して表沙汰にはできない権謀術数。ミステリファンよりも、中世西洋の歴史小説を好きな人におすすめ。(2006/9/28)

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