スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

パヴァーヌ/キース・ロバーツ

パヴァーヌ
キース・ロバーツ

My評価★★★★☆

訳:越智道雄.解説:大野万紀
扶桑社(2000年7月)
ISBN4-594-02943-4 【Amazon
原題:PAVANE(1968)


16世紀、宗教改革も産業革命も起きなかったイギリス。エリザベス一世が暗殺され、スペイン艦隊は無敵のまま。国土は厳格なカトリック教会の支配下に置かれて異端審問が行われ、言論や情報、テクノロジーが規制。
もしも中世の世界観が20世紀まで続いていたら?イギリスという国を、一勢力による思想(この場合はカトリシズム)が支配した場合どうなるのか?という、歴史のifを扱った改変歴史小説。

********************

かつてサンリオSF文庫から刊行された作品が復刊。内容に少し変動があるそうで、決定版といえるのではないかと思います。
序章、第一~第六旋律、終楽章で構成されていて、時間の流れに沿った短編形式になっています。
各章の出来事は直接的には関連しないのですが、来るべき新たな時代へのうねりの断片といった感じ。それらが積み重なることで、次第に世界が浮き彫りにされていくんです。
丘陵を走る機関車(ただし線路上ではない)、信号塔での手動による通信システム、石版による印刷術など、どれも実際にあった技術ばかり。それらの技術に携わる現場・実生活レベルでの閉塞的な現状を打破するために、変化または進歩・改革を希求する人々の物語だと思います。

機関車の煙りの揺れ具合、頬を斬る風、丘陵地帯の草の露、雪の冷たさ・・・。
そういった諸々の情景が、リアルさを越えて皮膚感覚で伝わってきました。などと書くとのんびりした田園風景のようですが、労働に携わる人々の汗の臭いまで嗅げる気がします。そこで生活する人々は様々な圧力下に置かれているんです。

この作品はSFとして紹介されているけれども、必ずしもSFにこだわる必要はないのではないかと。
民間伝承や魔女、魔女狩りが20世紀まで持ち越されて、妖精ととらえることのできる「古い人々」が登場したりするので、ファンタジーと受け止めるいるかもしれません。現代とは異なる道筋を辿った世界の「歴史小説」として読むのも一興かと。
どう読むにせよ、SFは苦手という人でも抵抗は少ないだろうと思います。
教会の存在理由。第六楽章までの中世風の閉鎖的な世界から、終楽章の新たな時代の幕開けへ至るまでの意識の解放、時代を方向付ける集団意識の流れ、人間性と社会構造の「進化」という点ではSF的だと思うのですが。(2001/8/31)

追記:2012年10月、ちくま文庫化【Amazon】。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。