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黄金虫/リチャード・マーシュ

黄金虫
リチャード・マーシュ

My評価★★☆

訳:榊優子,解説:戸川安宣
創元推理文庫(1986年12月)[絶版]
ISBN4-488-54201-5 【Amazon
原題:The Beetle(1897)


「黄金虫!」盗人の放ったこの一言で、才気煥発で押し出しの強い新進気鋭の政治家ポール・レシンガムが、哀れなほど異常なまでに恐れ慄いた。しかし、その盗人のロバート・ホルトは操られていたのだった。
失業者で無一文となったホルトは、救貧施設に泊まれなかったため、一軒の空き家のような家に入り込んだ。ところがベッドには異様な容貌の異国(東洋)人がおり、ホルトは意のままに操られる傀儡にされてしまう。

レシンガム邸から逃げ出す盗人ホルトと鉢合わせした、科学者で発明家の青年シドニイ・アサートン。
アサートンがレシンガムの様子を見る。実はアサートンはマージョリー・リンドン嬢に告白したが、彼女がレシンガムとの結婚を考えているほどの仲だと知らされた直後。ためにレシンガムに対して、あまりいい感情を抱いていなかった。

そのアサートンの前に、黄金虫の化身と称する東洋人が現れ、レシンガムへ復讐しようとしていることを告げた。レシンガムにマージョリーをとられたアサートンを唆して仲間にするためだ。一方、レシンガムは名探偵オウガスタス・チャンプルに、事件と犯人の解明を依頼。

すべての発端は、彼が20年前にカイロで遭遇し軟禁された魔窟での、イシス信仰の祭儀にあった。
マージョリーが東洋人に連れ去られ、アサートン、レシンガム、チャンプルたちの追跡が始まる。レシンガムの秘密とは?黄金虫とは何なのか?

********************

戸川安宣によるあとがき(解説)によると、リチャード・マーシュ(1867-1915,イギリス)は、イートン及びオクスフォード大学で学ぶ。作家のロバート・エイクマンは彼の孫にあたるそうです。

ロンドンを跳梁する邪教の魔術に対抗する話かと思いきや、最後は探偵による追跡劇。
東洋(エジプト)の邪教の信徒が、ヴィクトリア朝の世紀末ロンドンで跳梁する怪奇小説。いわゆるスリラーですね。探偵が登場するので、怪奇探偵小説となるのかな。怪奇色は薄いのですが。似たような傾倒として、コナン・ドイルの『緋色の研究』が挙げられます。
物語は4つのパートで構成されており、それぞれホルト、アサートン、マージョリー、チャンプルの一人称による4人の視点で語られます。複数の視点で語られることによって、事件の重層さ、各人物像が浮かび上がるという狙い。
1912年にはアメリカでも刊行されたというから、当時はよほど人気があったのでしょう。私にはそれほど面白いとは思えないのだけれども、背景となっている当時のイギリス社会の様子は興味深かったです。

本書では異国の秘教=邪教であり、その信徒はアラブ人という、有色人種蔑視と白人選民主義が表れています。その点は時代性だから仕方がないのでしょうねえ。こうしたことは、おそらくは当時のイギリス人の一般的な反応ではないかと思います。なぜなら作者に特別な偏見があったとは思えないんですよ。

イギリスは階級社会として知られますが、作者は階級社会に対して結構辛辣。
マージョリーの父親は古い家柄を誇るガチガチの保守派で、成り上がりのレシンガムを頭から毛嫌いします。父親はレシンガムの才知と人柄はまったく無視し、家柄でしか判断しない。
一方のマージョリーは、社交界の花でありながらも婦人労働者クラブの会合に参加し演説までする活動家。彼女は理不尽な父親には従わず、真っ向から対立する。
当時、女性の活動家がいたことは知られていますが、けれどもマージョリー女性像は当時としてはまだまだ新しいタイプだったのではないでしょうか。
そんなタイプの女性が小説に登場するということは、読者に受け入れられる素地がすでにあったということではないでしょうか。(2007/8/12)

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