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ウィーンの辻音楽師 他一篇/グリルパルツァー

ウィーンの辻音楽師 他一篇
グリルパルツァー(フランツ・グリルパルツァー)

My評価★★★☆

訳・解説:福田宏年
岩波文庫(1979年7月)
ISBN4-00-324232-7 【Amazon

収録作:ウィーンの辻音楽師/ゼンドミールの修道院


フランツ・グリルパルツァー(1791-1872)はオーストリアのウィーンを代表する劇作家・詩人。短篇小説は生涯にこの2篇のみだとか。
『ウィーンの辻音楽師』では穏やかで他人には省みられることのない、ささやかだけれど清き生き方を描いた佳品。『ゼンドミールの修道院』では愛憎をゴシック小説風に描いています。まったく雰囲気の異なる2篇に、作者の技量のほどが伺えます。
めまぐるしい日常生活の合間、俗事から離れ、息抜きに読むのにピッタリな本。

ウィーンの辻音楽師(Der arme Spielmann.1847)
2年前のブリギッタ祭で私は、70歳を過ぎていると思われるヴァイオリン弾きの老人に目を留めた。老人の音楽は突拍子もなかったが、真剣に演奏していた。
彼の音楽への熱意と意外な教養に興味を覚えた私は、老人の跡を追って声をかけた。老人に好意をもった私は、数日後、彼の屋根裏部屋を訪ねた。

老人はヤーコプといい、青年時代にあまりにも几帳面すぎて不器用なため父親の怒りを買い、父親から相手にされぬまま暮らしていた。
たまたまパン屋の娘が口ずさんでいた歌を聞き、その歌に魅せられて音楽に傾倒する。彼は娘バルバラと話すようになるが、周囲は二人の仲を誤解していた。
やがてヤーコプの兄が失脚の上姿を消し、かつて宮中顧問官を勤めていた父親が亡くなり、ヤーコブが遺産を相続すると金目当てに人が集まった。唯一人バルバラだけが彼の将来を慮っていた。

翌年の春になり、洪水が郊外一帯を襲った。私は老人が無事かどうか訪ねて行くと、ゲルトナー小路は湖のようになっていた・・・。

********************

あまりにも不器用なゆえに恋と安逸とした生活を逃した老人。バルバラでなくてももどかしく思うのでは。
ヤーコプは純粋と言えるかもしれないけれど、自分が傷つくことを恐れているようにも思えなくもありません。でも、ラストでは正直者で無私の人として描かれています。
ひっそりと誰にも迷惑をかけず、ささやかな幸せを求めた老人。その人生は、本当に幸せと言えるのだろうか・・・。私にはわかりません。ただ、うわやましく思うことはあります。それよりも、バルバラは幸せだったのだろうか、と思わずにはいられませんでした。

作中で描かれるウィーンの街並みに世紀末の殺伐さや虚飾がなく、市井の人々の息遣いがそれとなく感じられて好感が持てました。作者が都市そのものを書こうとしなかっただけに、逆に当時の様子がスンナリと伝わってくるようです。

ゼンドミールの修道院(Das Kloster bei Sendomir.1828)
旅の途中、二人の騎士がゼンドミール州の修道院に一夜の宿を求めた。夕食後に部屋へ下がった騎士たちの元へ、修道士らしくない風体で厳しい眼をした男が、暖炉の火を熾しに来た。
騎士が修道院の由来を訊くと、男は一帯の地所の持ち主であったシュタルシェンスキー伯爵のことを語り始める。

伯爵は女嫌いとして知られていたが、実は引っ込み思案なだけだった。あるとき美しい娘エルガと出会い一目惚れする。
貴族の親娘は貧しく暮らしていた。エルガの一族は、父親と兄たちの政治的な陰謀が露見して国から追放されたのだった。
伯爵はエルガと結婚し、ツテを利用して彼女の父親の地位と名誉を回復させ、兄たち一族を赦免してもらう。従兄弟のオギンスキーも戻ってきたが、エルガはなぜかオギンスキーに冷淡だった。

やがて夫婦に娘が生まれた頃、遊蕩三昧に暮らしていたエルガの兄たちは、またもや陰謀を企み始める。
老執事は伯爵に、エルガの兄の手の者が、夜半にこっそりと城へ忍び込んでいるのを見たと注進。
伯爵はエルガが浮気しているのではないかと疑う。エルガは否定するが、あまりにも不自然な妻の態度に伯爵は・・・。

********************

15世紀末の中世騎士のロマンス、ではなくて伝記小説。副題に「伝承実話」とあることから、実際に起こった事件。でも中世では似たような事件が数多くあるので、新鮮さは感じませんでした。とはいえ、作者はいかにも劇作家らしく、メリハリの効いた展開の愛憎劇に仕立てています。
解説によるとこの短篇には、作者の苦い体験が重ね合わせられているそうです。そう考えると、ラストはなるほどなぁと思いました。

なぜか城や修道院には、陰惨な物語が多く見受けられるような。しかもそんな話がよく似合う場所なんですよねえ。石造りの建物のせいなのかな。確かに石の建物は陽が射さず圧迫感があって重ぐるしく、世間に対して閉じられた世界のよう。舞台効果としては満点でしょう。(2002/5/17)

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