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氷島の漁夫/ピエール・ロチ

氷島の漁夫
ピエール・ロチ

My評価★★★

訳:吉永清
岩波文庫(1978年10月)
ISBN4-00-325461-9 【Amazon
原題:Pêcheur d'Islande(1886)


19世紀末、ブルターニュ地方の漁村プルパラネックでは、男たちは冬が終わる2月になると遠洋漁業団を組んで、極北の氷島(アイスランド)への航海に出る。
男たちは交替で昼夜の別なくひたすら釣り、30時間で鱈を数千匹も釣り上げる。そして8月末に帰還する。秋の濃霧のたちこめる頃には、それぞれの家へ戻り、婚礼や出産に励んでいた。

いまだ少年時代のあどけなさが残るシルヴェストル・モアンと、彼が兄のように慕っている腕利きの漁師で大男ヤン・ガオも、アイスランドの海上にいた。彼らは先祖代々、漁師として暮らしてきた。
漁期が終わって村へ戻ったヤンは、村出身で一時期父親に付いてパリで暮らしたことのある、シルヴェストルのいとこで令嬢のゴード・メヴェル(マーガレット=ひなぎくの意味。ブルターニュではマルグリットという)と、二人は知人の結婚披露宴で出会う。二人は結婚披露宴でワルツを踊る。
ゴードはヤンに惹かれるが、ヤンはそっけなかった。むしろゴードを避けているようですらあった。

歳月が過ぎ、シルヴェストルは5年の兵役につく。彼は徴集され、戦前にいる台湾の艦隊に編入されるため、中国艦隊と合流すべく、スエズ運河を通りインド洋へと南下、シンガポールを経て南ベトナムで艦隊に配置される。たった一人の肉親である祖母イヴォーヌを残して。
その頃ヤンはアイスランドの海上にいた。ヤンが戻った来たとき、メヴェル家もモアン家も変わっていた。やがてヤンとゴードの誤解は解け、慌しく婚礼の日を迎える。ヤンが6日後に、アイスランドへの出航を控えていたからだった。

********************

ビエール・ロチ(ロティとも。1850-1923,フランス生まれ)は、17歳で海軍兵学校を出て、後に海軍大佐となった生粋の海軍軍人。ほとんど全世界を就航したという。本作はロチの代表作といわれる小説です。

苛酷な大海に生きる漁師たち、その漁獲を生活の糧とする人々。ヤンとゴート、シルヴェストルと祖母イヴォーヌを中心に、生も死も自然に委ねざるを得ずそこから逃れられない人々の物語。
人生は無常である、海の男にとっては自分の命さえ思い通りにならない。だからこそ宿命として捉えるしかないのかもしません。
しかし作者の視線は決して冷徹ではない。無常ではかない命であるが故に、美しいもの、愛すべきものが、しっとりと輝いているかのよう。人生とは一寸先は闇という典型的な作品だけれども、それゆえに一瞬の幸せが煌いて愛しい。

生涯の殆どを海で過ごした作者だけに、大海の描写は絵画を観ているかのように視覚的で迫力があります。ブルターニュ地方の貧しい片田舎の風俗も詳しい。
全体的には小説としての写実主義というよりも、絵画としての写実主義という印象が強かったです。まるで絵画を文章で表現しているかのように感じられました。作者が細部を想像によって補うのではなく、とても写実的なのです。ときにはルポしているかのような場面もありました。小説としてはやはりロマン派でしょうね。

私としてはストーリーそのものよりも風景描写や、特に漁民の生活という風俗が興味深かったです。
当時の漁船団の航海や漁法、漁村での生活などが、確たる知識を元にして書かれているのがうかがえます。小説として漁業の工程を書いている作品は珍しいと思うのですが。(2002/7/22)

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