スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

野性の呼び声/ジャック・ロンドン

野性の呼び声
ジャック・ロンドン

My評価★★★★

訳:辻井栄滋
現代教養文庫(2001年12月)[廃版]
ISBN4-08-773365-3 【Amazon
原題:The Call of the Wild(1903)


サンディエゴウの名家に飼われていた犬のバックは、騙されてアラスカ近くのカナダ極北地方に売り飛ばされた。
クロンダイク(カナダ北西部)で金鉱が発見され、一山当てるべく世界中から北極へと人が集まっていた。人々は移動手段に犬ゾリを使っており、多くの犬が求められていたのだ。なにしろ極寒の地での苛酷な労役に耐え切れず、多くの犬が倒れるからだった。

バックは棍棒で打ち据えられながら、人間に仕える掟を叩き込まれる。従順になったバックは、最初はエスキモー犬たちと一緒に郵便ソリを引く。
温暖な地でのんびりと暮らしていたバックは、初めは極寒での労務に慣れないでいた。だが次第に順応し、頭角を表して野性に目覚めてゆく。

バックとエスキモー犬たちは売られ、次々と主人を変え、一時も休む間もなく働かされる。
やがてバックはソーントンと出会い、彼を愛し行動を共にする。ソーントンも金鉱探しの一人で、彼は仲間とバックと共に、伝説の金鉱を求めてユーコン川をさすらう。そんな中、バックの野性回帰への憧憬は狂おしいほどに強まってゆく・・・。

********************

ジャック・ロンドン(1876-1916)が1903年7月に発表した小説。原書から数葉の挿画有り。
ほぼ100年を経た現在読んでも古臭さがない。古びていないんですよ。もちろん動物愛護精神などの倫理観は現代とは異なりますが。
飼い犬だったバックが極寒での激務に耐え、次第に野性に目覚めるのが主題ですが、その間、バックは否応なく対人間関係を修得するわけです。
愛情のある人間、愛情はなくても公正な人間、まったく愛情のない人間に対して、バックの態度はそれぞれ異なります。このことは、犬であっても人間であっても変わりはないんですね。人と犬、人と人とを結ぶものは何なのかがハッキリと伺えるんです。

訳者はあとがきで、たとえば、庭師の助手のマニュエルの生活苦に垣間見える「文明」生活に限らず、この作品に登場する人物(犬をも含めて)が、文明世界に付き物の黄金色した金属に大なり小なりのかかわりを持っています。(p179)と言っています。
実のところ、私はバックを通して描かれる人間社会に興味を惹かれます。ソーントンとバックに限らず、登場人物(犬も)は、すべてゴールドラッシュに関わっているんですよね。ゴールドラッシュという一攫千金に限らず、文明という事象に誰もが関わりを持たずには生きられないのです。

また、急使のペローとフランソワは、バックたちに愛着があっても上からの指示に従わなければならない。一方、バックたち犬の世界では強い者が他を制す。どちらにも階級社会がある。この階級というものに束縛されていないのがソーントンでしょう。
バックがソーントンに惹かれるは当然の成り行きだろうと思います。しかしソーントンすら文明の影響、いえ、文明がもたらすものへの欲望から無縁ではいられないのです。バックはソーントンに従う限り、彼の欲望の影響を受けざるを得ない。
突き詰めていくと、この作品は動物文学というよりは、人間社会を描いた物語なのだと思います。作者は動物文学とかアドベンチャーものとしてではなく、ゴールドラッシュという一過性の出来事としてでもなく、文明というものの在り方について、作者なりの考えを書きたかったのではないでしょうか。それゆえに、この作品はいま読んでも古びておらず、今後も古びることはないのではないかと思います。(2002/10/5)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。