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ラピスラズリ/山尾悠子

ラピスラズリ
山尾悠子

My評価★★★★★

国書刊行会(2003年9月)
ISBN4-336-04522-4 【Amazon


トビト記をモティーフに、冬眠者の一族・人形・大天使ラファエルを巡る連作幻想譚。
夜汽車を持つ間に、時間つぶしに立ち寄った深夜営業の画廊で観た三枚の銅板画。店主の説明によると銅板画のタイトルは、<人形狂いの奥方への使い><冬寝室><使用人の反乱>。

かつて同じような状況で、母に連れられて観た記憶が蘇る。そのときは<痘瘡神><冬の花火><幼いラウダーテと姉>だった。銅版画は何を意味しているのだろう。『銅板』

館の主人たちは外から塔に鍵をかけさせ、春まで冬眠する。だが、真冬に一人の少女が目覚めてしまった。しかし塔から出ることができない。そこへゴーストが現われ、少女はゴーストと数日を過ごす。『閑日』

『竈の秋』では、冬眠の準備をする館に、人形が次々と運び込まれる。消えた荷担ぎ、痘瘡、そしてゴースト・・・。館で様々な事件が起きる。
一転して『トビアス』では現代の日本が舞台に。
『青金石』は13世紀アッシジ。フランチェスコの前に現われた男の話とは?

********************

山尾悠子は、70年代~80年代前半にかけて活躍した幻想小説の書き手。その後執筆を休止。近年、十数年の沈黙を破り、執筆を再開。私にとって山尾悠子は伝説的存在。彼女の作品を読んだのは初めて。
この本は函入りで、函もラピスラズリ(聖母マリアを象徴する色で「マドンナ・ブルー」とも言われる)をイメージしたクロス貼りに箔押しの装丁。ウットリするほど美しい!

庭や建物を埋めるかのような枯葉、むせかえる腐葉土の匂い、朽ちつつある塔・・・。
幾度も繰り返される枯れ葉と人形のイメージ。命の塊である腐葉土(p222)に人形ときたら、ゴーレムを連想してしまう。
死と崩壊を予感させる冥いイメージに満ちているのだが、かといって不気味さはない。淡々としていて、ひっそりと語られる物語といった感じがしました。ラストでは一転して生(再生)の息吹きに溢れる。でもこのラスト、時間的には過去の出来事であり、物語の発端でもあるんですよ。
香気と仄かな情念、緻密さ。溢れるイメージを畳みかけて読者を奔流させるのではなく、むしろ淡々とした感がありました。イッキに読むのではなく、イメージを味わいながらジックリ読むべき作品。
一部でカルト的な人気のある作家らしいのだが、わかる気がします。とても特異な作家ではないでしょうか。全く受付けない人と、クセになる人に分かれるのではないかな。私はもろちん後者!

でも、一読しただけでは理解しにくい箇所が多々ありました。例えば、女の子なのに何故「坊ちゃん」なのか?
女の子・ラウダーテ・いつきは、『青金石』に登場する男の転生?それともトビア(老トビトの息子)の魂の持ち主ということなのだろうか?わからない・・・。
ゴーストの存在意義、<定め>と残された時間の意味などもわからなかったので、時間をおいて再読しなくちゃ。

トビト記には大天使ラファエルが登場します。ラファエルは対疫病の守護天使。タイトルは大天使ラファエルの羽の色と、聖母の色からきているのだと思います。<使用人の反乱>のイメージはトビト記からでしょうか。冬眠者が放浪する一族であることも、トビト記に想を得たのだろうと思います。
トビト記とラファエル、フランチェスコを繋ぐのが「疫病」。落ち葉を焚いて煙りをたてるのは、疫病除けのためではないのかな。眠り続けるイメージは別の逸話からきていると思うのですが、それが何であるかは自信がないのでここには書きません。

重箱の隅を突付くようなのですが、私の持っている資料によれば、1226年の春にフランチェスコはポルツィウンクラには居なかった。アッシジには居ても、市中にある司教館で療養していたことになっています。ここでフランチェスコは、サンタ・キアラからの手紙を受け取っているのです。ま、場所がどこであれストーリーに変わりはないのだけれど。(2003/10/26)
追記:国書刊行会のHPで作者が本作について語っていますが、上記の件に関して、意図的に場所を変更したとのこと。

備考:2012年1月、ちくま文庫化【Amazon】。補筆改訂版なのだそうです。単行本持ってるけど、文庫も買うぞ!

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