スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シチリアでの会話/エーリオ・ヴィットリーニ

シチリアでの会話
ヴィットリーニ(エーリオ・ヴィットリーニ)

My評価★★★★

訳・解説:鷲平京子
岩波文庫(2005年2月)
ISBN4-00-327151-3 【Amazon
原題:Conversazione in Sicilia(1941)


家を出た父からの手紙によって、15年ぶりに故郷シチリアの山あいの実家へ帰変えることを思い立った私シルヴェストロ。
シチリア行きの汽船(連絡船)のなかで見かけた、オレンジしか食べるもののないオレンジ園の貧しい出稼ぎ夫婦。髭ありと髭なしの二人の男。そして私は、大ロンバルディーア人のような威風堂々とした壮年の男と知り合う。男は地主だが、人間は新しい別な義務によって満たされるのだと説く。

私は故郷の母と、少年時代のことについて語り合う。今も昔も冬はニシンで夏はピーマン、アザミを添えた蚕豆の食事。保線夫の官舎に住んでいたころ、学校帰りに、汽車の貨車に潜り込んでいた少年時代。母の語る偉大なる祖父。
注射器を持って巡回する母に付き従った私は、まともに食べる物のない人々を見る。また、旅の研ぎ屋と人間エゼキエーレ、人間ポルフィーリオらと知り合う。エゼキエーレは、世界はとても傷つけられていると言う。人間ポルフィーリオは目の前の人々に戸惑い困惑しながらも、一人安らぎのなかで微睡んでいた。

夜の闇の中、私は兵士と出会う。その私の周りに亡者のごとく、髭ありと髭なし、大ロンバルディーア人、人間エゼキエーレ、人間ポルフィーリオ、女たちが集う・・・。

********************

イタリア・シチリア出身のエーリオ・ヴィットリーニ(1908-1966)の本作は、同時代のチェーザレ・パヴェーゼ『故郷』とともにイタリア・ネオレアリズモ文学として知られる。反ファシズムの精神的基盤といわれる作品。
パヴェーゼの『故郷』もそうだけれど、本書もどこが反ファシズムの精神的基盤となるのか私には理解するのが難しかった。
『故郷』と異なるのは、次第に幻想的になっていくところであり、食べるものも仕事もなく病気となった貧しい人々が登場するところや、大ロンバルディーア人やエゼキエーレ、ポルフィーリオといった面々による、形而上学的な対話が行われるところかな。

ストーリーらしいストーリーはない・・・ですね。描かれているのはファシズム政権下のシチリアの現状なのでしょう。
作者は検閲を突破するために直截的な表現を避け、暗喩的であったり象徴的だったり抽象的な表現となっているのです。当時の時代性がわからないので、非常に読解しにくかったです。
なかでも母親と父親の役割がめまぐるしく変わっていくので、それに幻惑された感じがします。他の登場人物の役割も、いまひとつよくわからなかった。
ふと思ったのだけれど、この作品の現実と幻想を構築していく手法は、フェリーニの映画『アマルコルド』に近いのではないかなぁ。

解説は異例の長さ。この解説だけで一冊の薄い本になりそうなぐらい。でもこの解説を読んで、ようやくうっすらと解りかけてきたかな。作品を理解するために、この解説は絶対必要です。それでもまだピンとこないのだけれど・・・。
解説を読む限り、作者の目指したのは階級制度による社会的格差の撤廃ではなかったのかな。
シチリアのシラクーザで、鉄道員の息子として生まれたヴィットリーニ。おそらく家庭は貧しかったでしょう。当時はシチリア島全体が貧困に喘いでいたろうと思います。そんな彼が長じて反ブルジョアとなり、革命を目指してもおかしくはないと思う。反ブルジョア思想がファシズムへと傾倒させたのではないのかな。
ヴィットリーニは、1936年のスペイン内戦によってイタリアファシズム政権の正体が明らかとなり、ファシズムに失望し反ファシズムの実態を知ったのだとか。

正直に言って、全体的によくわからなかったです。一読だけではわからないので、もっと読み込まなければ。
いえね、反ファシズム的だとは思うんですよ。でも反ファシズム作品と言い切れるほど、私はファシズムについての知識がないので、安易に反ファシズムだと言いたくない。
相応の知識のある人ならともかく、この作品が反ファシストたちに実際にどんな影響を与えたのか私にはわからないので、反ファシズムの精神的基盤となる作品かどうか本書だけでは判断できないわけですよ。
勘違いしないでほしいのは、つまらないわけではないのです。反ファシズムについて知らなくても、小説として魅力があるのです。不思議な魅力があるんですよ。言霊といいますか、言葉そのものの力を感じました。
私としては、ファシズム体制下という状況からの出口を求め、新たな世界への入り口、新たな価値観を模索している状態、といった印象を受けました。(2007/2/25)

故郷(チェーザレ・パヴェーゼ)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。