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ゴースト・ドラム/スーザン・プライス

ゴースト・ドラム 北の魔法の物語
スーザン・プライス

My評価★★★★★

訳:金原瑞人
カバー画:中村仁
福武書店(1991年5月)[廃版]
ISBN4-8288-4952-1 【Amazon
原題:The Ghost Drum(1987)


冬が一年の半分を占める北の国で、奴隷の女が赤ん坊を産んだ。奴隷の子は奴隷にしかなれない。子どもの将来を嘆いている母親の前に魔法使いの老婆が現れ、後継ぎの魔法使いに育てるために赤ん坊を連れて行った。
赤ん坊「チンギス」は成長して魔法修行に励む。そして仲間たちから、優秀な魔法使いになるだろうとウワサされるほどになった。しかし、はるか北に住んでいる魔法使いクズマは、優秀なチンギスをねたんでいた・・・。

さて、この国はギドン皇帝という残虐な皇帝が治めている。ギドンは産まれてくる赤ん坊が将来に皇帝の座を脅かすという予言を聞かされる。
予言を信じたギドン皇帝は、身重の后ファリーダを奴隷ともども塔に閉じ込めて、一生出られないようにした。
ファリーダは閉じ込められたまま子どもを産み亡くなってしまう。奴隷によって赤ん坊は「サファ」と名付けられた。
狭い丸天井の部屋で育ったサファ皇子は、外へ出たくて気が狂いそうなほどだった。
ある日、サファ皇子の孤独で絶望に満ちた声を聞いたチンギスは、皇子を塔から連れ出してやった。そして自分の弟子とした。

ギドン皇帝が亡くなり、妹のマーガレットが女帝に即位。彼女は真の継承者であるサファ皇子を暗殺したいと考えていた。
魔法使いクズマはマーガレットに、チンギスもろともサファ皇子を殺す方法を提案。クズマの罠にかかり、チンギスとサファ皇子は絶体絶命の危機に陥る・・・。

********************

魔法使い・皇子・皇位争い・・・というとお伽噺的なファンタジーだと思うでしょうが、実はこの作品、暗くて血なまぐさい物語なのです。甘ったるいファンタジーや英雄譚ではなく、凄絶さのある内容です。
読後に気づいたのですが、風景が描写された個所が少ないんですよね。なのに最後まで雪と薄闇のイメージが頭から離れない。なぜだろう?
それは冒頭で丹念に綴られた風景描写が、いっきに北国へ連れて行ってくれたことと、冬以外の季節がほとんど描かれていないからでした。
衣服などの小道具の使い方もありますが、季節を限定することによって、物語が始まる冷たい雪の夜のイメージが、ラストまで強烈に作用していたのです。上手いと思いましたね。
一年のほとんどが暗い冬に閉ざされた国では、情念も暗闇に閉ざされたまま育まれる・・・そんなイメージが浮かびました。

訳者あとがきにアメリカの書評における締め括りの言葉が載っているのですが、その箇所を読んだときにピッタリだと思いました。それは「子どものための大人の物語」というコピーです。要は子ども大人も惹きつける物語ということ。この物語は、子どもだけに読ませるにはもったいないのです。
この作品は1987年のカーネギー賞を受賞していますが、もしも最終章が書かれなければ、救いようのない血生臭いだけの物語となるので、選考されたかどうか疑問を感じます。最終章があってこそ、子どもの(子どもが読む)ための大人の物語になるのだと思います。
東洋思想的な結末を迎える最終章ですが、冒頭から度々登場する謎の存在については明らかにされていません。ですが、この存在がいるからこそ、物語世界の謎めいた奥行きが深まっているのだと思います。(2000/8/18)

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