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トロルとばらの城の寓話/トールモー・ハウゲン

トロルとばらの城の寓話
トールモー・ハウゲン

My評価★★★★☆

訳:木村由利子
ポプラ・ウイング・ブックス(2002年11月)
ISBN4-591-07418-8 【Amazon
原題:SLOTTET DET HVITE(1980)


昔、ある国に王様とお妃様に愛されず育った王子様がいました。成人した王子様は幸せを求める旅に出て、トロルに囚われている王女様を救いました。そして二人は、夢の力で世界一大きく美しい「白い城」と庭園を創りだして、周りに壁をめぐらせて幸せに暮らしました。
さて、物語はこれから始まります。

「白い城」でエルム少年は誰にもかまってもらえず暮らしています。父さま陛下も母さま陛下も、息子のエルムが目に映っていないよう。
白い城を中心には「果てなし庭園」があり、庭園は壁に囲まれています。エルムは庭園から出たことも、庭園の外を見たこともありません。
なぜならエルムは父さま陛下から、壁に囲まれた城と庭園が世界そのものであり、壁の向こうは「アラズの地」といい、灰色の広がりしかないと教えられて育ったからです。

ところがある日、庭園の隅で年上の少女レリアと出逢いました。また、ぼんやりとしか姿の見えない少年とも出逢いました。レリアと少年は何者でどこから来たのか?父さま陛下と母さま陛下は何も教えてくれず、しかも何か恐れています。
エルムは、両親が自分に何かを隠していること、庭園の外にも世界があることに気づき始めました。

********************

タイトルにあるように「寓話」です。現実にある家族・親子の姿を童話風にした作品。
子どものためと言いながら、本当は自分のためでしかなく、自身の理想を押し付ける父さま陛下。しかし彼の理想は、彼の虚栄を満たすものでしかないでしょう。
父さま陛下のやり方に疑問を抱きながらも、自信をもてないために服従する母親。二人は自分たちの城を壁で囲い込み、外界から隔絶して暮らしています。

それは言わば、二人にとっての幸せを囲い込んでしまうこと。なぜ隔絶してしまうのか?それは外界からもたらされる変化を恐れてのことでしょう。恐れが賢明な判断を惑わせてしまうのだと思います。夢から編み出された城と庭園には、エネルギー(生命力)が感じられません。ふわふわと頼りなく実在感に乏しく描かれています。
囲い込まれた小さな世界は、当然ながら停滞し退廃してゆきます。そんな閉ざされた世界で、両親は自分たちに都合のいい子どもを育てようとするのです。これはある意味、洗脳とも言えるのでは。
欺瞞に気づいた子どもは両親と対決し、ふた親の間違いを真っ向から指摘します。それは両親を否定することではなくて、子どもにも人格があり、彼らには彼ら自身の意思と生き方があるということ。

私が特に興味深かったのは、自分の子どもと対立した結果における両親のあり方です。歳を重ねれば誰もが大人と呼ばれますが、実のところ歳とっただけの子どもでしかないのです。
子ども時代のトラウマを克服できないまま歳を重ねた両親の姿に、大人と子どもとは何が違うのかと考えさせられました。
私としては、子どもよりも大人、子を持つ親にこそ読んでみて、と言いたい作品でした。(2003/4/11)

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