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夏には きっと/トールモー・ハウゲン

夏には     きっと
トールモー・ハウゲン

My評価★★★☆

訳:木村由利子
カバー画・挿画:浜田洋子
文研出版(1986年6月)[絶版]
ISBN4-580-80470-8 【Amazon
原題:TIL SOMMEREN-KANSKJE(1974)


12歳の少女ブリットは、土曜の夜が嫌い。特に日曜日は最低。
両親は毎週土曜の夜になると、家に人を集めてパーティーを開く。そして両親は日曜日になると遅くまで寝ていて、起きてもむっつりしている。
ブリットは土曜の夜の騒々しさ、日曜の午前の静けさが嫌い。ブリットは両親にもっとわたしのことを考えてほしいと思うけど、甘えていると言われるのがおちなので何も言えない。

パパは兄のクリスチャンのわがままは聞くのに、ママやブリットが何か言うとすぐカッとなる。パパは自分のやりたいようにするが、ママとブリットにはそれがない。ママはときどき無気力になって自分の中に閉じこもり、何もせず口もきかない・・・。

ブリットは人前に出ると途端に話せなくなる。友だちはグローしかいない。
でもグローはエバと友だち。エバはブリットにいじわるなので、グローもエバと一緒になってブリットにいじわるをする。
ブリットはテレサに憧れていて、彼女と友だちになりたいけれど、声をかけることができない。
そんなブリットだけれど、男の子ホーコンは気取らずに声をかけてきてくれた。
ブリットはさみしいときの話し相手がいない。森の小屋で泣いていると、女の人が声をかけてきた。近所の評判がよくないエルビラだった。そのエルビラだけが、ブリットの話を聞いてくれた。

エバとグローたちから、ブリットは悪意に満ちた仕打ちを受ける。
ママはパパのいいなりにならず、自分自身を取り戻すために働きに出ることを決意。だが、そのために夫婦仲がこじれてしまう。
ブリットの居場所はどこにもない     

********************

本作はハウゲンの第二作なのだそうで、ブリットの孤独がストレートに表現されていました。ズキズキとした痛みを感じずに読むことはできなかったです。
ブリットの孤独、それは人格を認められないこと。人格を否定あるいは無視されることは、人にとっていちばん辛いことではないでしょうか。

両親は彼女の話し相手になってくれず、ブリットにも意思と悩みがあるということに気づかない。そんなブリッだけれど、苦しんでいるママを助けてあげたい。でも、どうすればいいのかわからない。
パパは、ママとブリットにも意思があるということに気づかない。そのハパでさえ、実は悩みがあるんですよ。
パパもママもさみしさを紛らわすため、周囲の人々から仲間はずれにされないために、パーティーを開いているにすぎないのです。しかし、そうやって周囲に合わせることで、余計に自分を見失っていくんですね。けれども、ブリットにはそういうことができない。

ブリットは内気で強くはなく、不器用だけれども、自分を誤魔化したり曲げることができない。そのために傷ついてしまう。彼女が兄のクリスチャンのように周囲に鈍かったら、傷つくことはなかったろうに。
でも、誰よりも周囲をよく見ていて、その人のことを本人よりも理解しているのだと思います。

子どもは視野が狭いと言われます。家庭と学校がすべてだと思い込んでしまうらしいですね。成長するにつれて視野が広がり、家庭と学校以外にも大勢の人々がいて、多様な生活があると気づくようになるそうです。
ブリットがエルビラと出会えたことは、まさに家庭と学校以外の世界の扉を開くキッカケとなったのだと思います。

しかしまあ、テレサたちの底意地の悪さには腹が立ってなりませんでした。他者を貶めることでしか自分の優位性を確立できないとは!しかし、彼女たちも、たぶん一人でいることに耐えられないのでしょうね。
ブリットが致命的なダメージを受けたとき、彼女を見守り快復を待つ人たちがいます。ブリットという一人の人格を認め、受け止めてくれる人たちです。夏にはきっと、ブリットは元気になってくれるのでは。元気になってほしいと思わず願いました。
でも、彼女はいつかまた傷つくかもしれない。しかし一度痛みや苦しみ哀しみを乗り越えた人は、痛みや苦しみを知らない人より強くなれると思うのです。

子どもの気持ちがわからないという親と、いま孤独に苦しんでいる子どもたちに読んでもらいたいです。(2005/7/30)

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