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ねぎ坊主畑の妖精たちの物語/天沢退二郎

ねぎ坊主畑の妖精たちの物語
天沢退二郎

My評価★★★★★

カバー画・挿画:林マリ
筑摩書房(1994年6月)
ISBN4-480-80313-0 【Amazon

収録作:「ねぎ坊主ばなし」から/びわとヒヨドリ/夜の道/土神の夢/杉の梢に火がともるとき/人形川/グーンの黒い地図


書名を見て童話集かと思ったのですが、ダークで幻想な中短篇集。どれも死や日常に対する危機感や不安感といった感じを掻き立てられ、読後には冥いモヤモヤとした得体の知れなさやザラリとした苦味が残されました。それが好き。
この不安感や薄気味の悪さは、ファンタジーというよりホラーに近いかも。妖精というよりも、妖かしの者とか夢魔といった感じがするし、異界というよりも幽界というほうが似合うと思います。
総じて、冥く摩訶不思議なアマタイワールドが形成されていました。ホント、特異な作家であり、どれも特異な作品だと思います。

天沢さんの作品に共通する四大エレメントとして水が挙げられることがありますが、それは海よりも川、もしくは地下水脈でしょう。
私としては水と土だと思います。どちらも地に関係します。穿った見方をすれば、「地」に生命の根源を見出しているかのような。

各短篇はそれぞれ独立した物語なのですが、相互に関連し合っているように思われました。
また、『光車よ、まわれ!』『オレンジ党と黒い釜』から成るオレンジ党シリーズに通じるところがあります。オレンジ党にハマった人は、さらにハマるのでは。
本書から初めて天沢作品を読むと「?」となるような気がするので、先にオレンジ党のシリーズを読むことをおすすめします。

「ねぎ坊主ばなし」から
隣り合うショウガ畑とニンジン畑。でもショウガの精とニンジンの精は仲が悪く、互いに相手をけなそうと隙をうかがっている。
ある春の日、青空から一面にキラキラしたものが降ってきた。それはギャラスケルだった!
ショウガの精とニンジンの精は、互いに相手に文句をつけようとしたのだが、キラキラキラキラしたギャラスケルは、野菜畑の上に10センチか15センチも降り積もった。しかもギャラスケルは!?

********************

中盤までメルヘンタッチなのだけれど、実はメルヘンではないんですよ。SFでいえば侵略テーマもの。しかしラストでひと捻りあるため、SFとは言えないんですよね。「幻視」という点においてファンタジーになります。
目に視えるものと視えないものがあって、視える人には変化がわかるけれど、初めから視えない人には何の変化がわからないのでしょう。
一見すると何も変わらないようなのですが、実はまったく変わってしまった。それがどことなく薄気味悪い。

びわとヒヨドリ
一軒の空き家に、大きなビワの木が植えられている。毎年たたわに実がつくのだけれど、鳥たちは絶対に食べようとしない。
なぜ鳥たちはその木の実を食べないのだろう?その理由を私が訊くと、一羽のヒヨドリが語ってくれた。ところが別のヒヨドリは、まったく異なった逸話を聞かせてくれた。
それはびわの木の精の少女と、恋人の桜の木の精の悲恋物語だった。鳥は精の宿っていない木の実は食べないと言うのだが・・・。

********************

びわと桜の恋人たちの美しくも哀しい物語。民話風でありながら、原因に人間が関っているところがこの作者らしい。
主人公の私は真実を知っても何もできない。無力なんですよね。しかし希望を失わないので、救いの残されたラストになっていてうれしい。
この短篇以外は、救い(希望)がほとんどないような話ばかりだから。本当に救われるかどうかは別として、一縷でも希望の残された話のほうが私は好きです。

夜の道
夜中に汽車の汽笛の音を聞いて目を覚ました京志(きよし)は、どうしても汽車が見たくて出かけることにした。
荒地を通りかかったときに、意地の悪いタンポポの小人たちに呼び止められる。林の中では気味悪い笑い声が聞こえ、老女に足止めされる。小舟で川を渡ろうとすると、今度は沼人間が現れた。
やっと線路に着くと汽車がやって来たが、汽車に乗っていたのは・・・。

********************

『魔の沼』に登場する田久保京志のサイドストーリー。
昼とは異なる夜の世界。そこでは、日中には現れないような、妖かしの者たちが潜んでいる。濃密な夜の闇に息づく者たちの気配が描かれています。
夜のイメージを描いたようであるからか、京志の体験は夢の中の出来事のような印象なのですが、京志がどういう状態にあるのかラストでわかりました。
にしても、ラストでの4人の老女は何者なのだろう。王女とは何者なのだろうか?

土神の夢
何年かぶりに目覚めた土神の与平。彼の脳裏をよぎったのは、棲家としてる工場の火事の記憶だった。
当時、与平は火事で燃えるビワの木の少女たちを助けようとしたのだった。すると激しい苦しみが与平を襲う。何かがあったのだ。何か思い出したくないことが!?
与平は記憶を探りながら、かつて火事から逃れて辿りついた場所を目指す。

********************

私としてはこの短篇がいちばん不気味な話でした。なんといってもラストの間際でのビワの実です。それはまるで悪魔めいた禍々しい嘲笑。与平を、あるいは作者をも嘲笑うかのよう。
『びわとヒヨドリ』と同じく工場の火事について触れているのですが、これはたぶん同じ事件ではないのかな。工場から流れでも汚染された排水または大気汚染が、作者を創作へ向かわせたのでは。

杉の梢に火がともるとき
林の中でひときわ背の高い杉の木には、ときにあやしいことが起こるという。林の中を歩いていた少年は名前を失い、自分が何者であるのかわからずにいた。
どこへ行けばいいのかわからないまま歩き続けていると、とある村へ出た。なぜか少年はなぜか男たちに追われる。しかし雑貨屋の少女に助けられる。
男たちは少年を滅ぼそうとしたいたのだった。少女は少年の味方であり、彼に赤い家へ行けと言う。少年は敵の城へ辿り着くが!?

********************

相手に貼り付けられたら剥がせなくなる魔法(魔法というのかな?)といアイデアがいい。
しかし、いったい少年は何者なのだろう。動物たちは少年の味方だが、敵は何者で何のために少年の敵対しているのだろう?そんな疑問が残ったけれど、不満ではないです。
この短篇は壮大な物語のエピソードの一つのように感じられました。この少年の物語を書いて欲しいな。

人形川
全校委員の長谷川みどりが、竜に頼みごとがあるという。竜はみどりについて行くと、他の全校委員が太田ヒロシを取り巻いていた。
だが、それは太田ヒロシになり代わっていたワラ人形だった。みどりたちは「あっち」へ行き、太田ヒロシを取り返したいと言う。
そのために竜の協力を必要としていた。"あっち"とはどこなのか?そこで竜たちが見たものは・・・。

********************

誰が何のために人形を作ったのか?それは一連の長篇を読むとわかることなのだけれど、うっすらとでしかない。
短篇としてみるならば、書かれていない部分が多くて欲求不満気味でした。長篇に通じるエピソードの一つ、あるいはバリエーションの一つといった印象。

グーンの黒い地図
学校にいる大門一郎に、父親から電話がかかってきた。自宅から「グーンの黒い地図」を持って、助けに来て欲しいと言う。
一郎は押入れから地図を出して、地図に示された場所へ向かうが、行く手にいくつもの罠が待っていた。
伊藤シズエは祖母から譲られた魔法の力で、一郎を助けようとする。二人は一郎の父親が囚われた理由を知るが。

********************

この短篇もオレンジ党に通じる話。
ただ、肝心の地図が何なのかはわからないし、一郎の父親はどうなったのかもわからないので、消化不良気味。グーンについて、少しだけ明らかになります。いや、かえってわからなくなったような気が・・・。

以下、ネタバレ気味。
話をまとめると、四本足族が王族で、六本足族がこの世界でいう「グーン」になるようです。
四本足族は、門柱を伝ってこの世に下りて来た。ということは、地上の者ではないということ。四本足族は六本足族(グーン)に支配される。
四本足族の王族の血筋が、人間に混ざる。王は不在となり、王族の記憶は一千年ぶりに人間の血筋に甦る。この王族というのは、『夜の道』で京志の言う王女の一族なのかな?(2005/1/24)

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