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闇の中のオレンジ/天沢退二郎

闇の中のオレンジ
天沢退二郎

My評価★★★★☆

カバー画・挿画:林マリ
筑摩書房(1976年12月)[絶版]
8093-88020-4604

収録作:赤い凧/ちいさな魔女/秋祭り/まわりみち/みかんの王子/燃える石/眠り姫/海辺で会った少女/三人のお母さん/«グーン»の黒い釜/グーンの黒い森/闇の中のオレンジ


短篇集というよりは、連作集といった方がいいかな。
本書を読んで、一連のアマタイ作品の繋がりがようやくみえてきた、ような気がしました。この短篇集があってこそ、長篇の不可解だっだ部分が埋まるため、アマタイ・ワールドの核となる作品集だと思います。ただし長篇から方がいいと思います。

チサ、長谷川みどり、石橋みどり、エルザの少女たちは、ある一定の人物像のバリエーションだと思われます。名前が違うだけで役割は同じなんですよね。
私としては、いちばん謎めいている少女カスミの物語があるのがうれしい。カスミの謎がすべて解明されたわけではないけれど、彼女の立場が少しは明らかになりました。
母親の死を扱っている作品が多いのだけれど、これだけ多いと異様に感じられてならない。天沢作品の共通項として、母親への愛惜が強く感じられるのです。そこには何か理由があるんじゃないのかな。

赤い凧
京志がカスミを公園で遊ばせていたとき、ナメクジナマズに襲われた。京志はカスミを自転車の後ろに乗せて逃げる。それを助けたのは!?
京志、チサ、カスミ兄妹たちが登場する一連の物語のオープニング的短篇。

ちいさな魔女
トリ子と次郎がチサのあとをつけて行くと、そこは公園の林だった。魔法で妹カスミをかくまって、敵から守る姉チサ。チサはカスミを守るため家を出て、京志と袂を分かつ。

京志は魔法を使えないためカスミを守れないのに、なぜチサは魔法を使えてカスミを守ることができるのかな。他の天沢作品でも、魔法を使えるのは女性に限られているのですが、それには何か理由があるのでしょうか。

秋祭り
チサとカスミがいなくなって数週間後、妹たちを捜している京志に、同級生のアキラが声をかけた。アキラはいいところへ連れて行ってやると言う。
そこでは真っ赤な幕が張られ、拍子木や三味線の音が聴こえ、何かの芝居が催されていた。

・・・というところで終わっているので、なんだか意味のわからない作品でした。でも、実は『眠り姫』へと続くのです。眠り姫で、京志がチサとカスミの状況を覗き見たということですね。

まわりみち
『ねぎ坊主畑の妖精たちの物語』に収録されている『人形川』の前日譚。
竜は学校へ行く途中、いつもの小路が通行止めになっていたので、別の路へ踏みいった。
そこでは、鎧のような物を着た大男が長い槍で、白い着物の人々をなぎ倒していた。不可思議な場所へ迷い込んだ竜たちを助けてくれたのは、長谷川みどりたち交通委員だった。

この後、物語は『人形川』へ繋がります。
竜は異次元に入り込んだということかな。キッチリとした設定によって書かれたというよりも、イメージ先行で書かれたかのような短篇。もっとも他のほとんどの短篇もそういう印象を受けたのですが。

みかんの王子
遠くの仕事先に向かう兄は、弟・宏の面倒を看るために一緒に連れてゆく。兄弟は旅館からトラックで海へ向かうと、砂浜に櫓が立ち、一面には人がうずくまっていた。
その中の一人が、宏を「王子さま」と呼ぶ。彼らの国、彼らを救う王子さまと。そして宏は島へと向かうが・・・。

どうもラストがよくわからない。宏はどうなってしまったのだろう。これは夢なのか、それとも宏は別の次元から覗き見ているのでしょうか。後者ではないかと思うのだけれど、わかんないなあ。

燃える石
種夫とゲンジは、学校からの帰途、橙色の石を蹴りながら帰った。ゲンジの家は風呂屋だが、男湯に何かがいた。
姿を見た種夫とゲンジは捕まえられそうになるが、そこへ石橋みどりが現れて・・・。
この後は『眠り姫』へと続く。

また「みどり」ですか。作者はよほどこの名前が気に入っているらしい。実際は石橋でも長谷川でもどっちでもいいのであって、苗字は重要ではないんですね。みどり=緑=自然、植物ということなのでしょうか。

眠り姫
トリ子と次郎に出会った種夫は、二人と共にチサの隠れ家へ行く。トリ子の話しでは、化け鳥がやって来るからチサが危ないのだそうだ。そのチサは、カスミを守ろうとする。だが、チサの魔法が効かない!?

カスミが狙われている理由が明らかになる一篇。けれども鳥たちは何者なのだろう。なぜカスミを必要としているのだろう。まだまだ謎が残りました。

海辺で会った少女
郵便受けの封筒には、竜宛ての切符が入っていた。その夜、竜が指定された電車に乗ると、着いたところは海辺だった。そこで竜は龍子と出会う。竜を呼び寄せたのは龍子だった。

竜と龍子の関係は、天沢作品を読み解く一つの鍵ではないでしょうか。天沢作品の登場人物と事件は、いくつかの世界の出来事が巧妙に重なり合っているのだと思います。
この話の後、龍子がどうなったのか気になります。

三人のお母さん
夜中に目を覚ましたサヨコは、雪が降っていることを知って外へ出てみる。近所の通りを歩いているつもりが、いつの間にか見知らぬ町をさまよう。
サヨコは黒い着物をきた人に案内されて、真っ黒な家に入ると、声がささやきかけてきた。そして一冊の本があった。

掴み所がありそうでなさそうな・・・。夢を綴ったかのような話で、脈絡がわからない。これが詩だったらまだわかるのだけれど、物語の場合は意味を求めてしまうから、前の母親と本との繋がりがわからない。詩と思えばいいのかも。

«グーン»の黒い釜
毎日少しずつ木が移動していることに気づいたキクエは、そのことを五郎に話した。すると五郎も家の側の松の木が動いていると言う。キクエは五郎とその妹と野原へ行くが、そこで「黒いもの」から逃げている木霊たちを見た。
木霊の話では、ゴミ焼却場にある「グーン」の釜から黒いものが溢れ出していると言う。ゴミ焼却場でキクエが見たものは!?

黒い釜は『オレンジ党と黒い釜』と似ているようでちょっと違いました。
ここで語られるグーンは環境破壊・汚染という意味であって、いまのところそれ以上の存在ではないんですね。だいぶストレートな作品だと思います。

グーンの黒い森
恭一は石橋みどりから、彼女の弟たかしがグーンにさらわれたことを聞く。恭一はみどりを手伝って、たかしを助け出そうとするが、六方小学校の生徒の邪魔が入る。そして、恭一に危機が迫る。

グーンが呪いや手先を使っていることから、この作品では人格化されています。
ここでは弟たかしがさらわれるのですが、他に父親がさらわれる話があるから、そのバリエーションなのでしょう。

闇の中のオレンジ
おつかいの最中に雨に降られ、雨宿りしていたエルザは、田圃の稲穂の向こうに船を見た。
一方、夢に現れた場所へと向かう由木道也は、雨宿りしている李エルザを見かけて声をかけた。二人は船が金(キム)船長の金龍丸であることを知る。

金船長は「物言う泉」を探していた。船長の地図を見た二人は、船に乗ってその場所へと案内する。<古い魔法>に邪魔されるが、船は物言う泉を守っている死せる王サラシュの館へ到着。
しかし兄弟の金船長といえども、グーンの魔を祓わなければ入ることができない。一方、エルザと道也は一旦は拒否されるが、入ることが許可された。

オレンジ党シリーズを補完し、『光車よ、まわれ!』へと繋がる重要な作品。中篇といえるぐらいの長さです。
オレンジというのはここからきているんですねえ。
金船長が何者なのか、おぼろげながらわかりました。金龍丸は時と時の境を越えることができるんですね。時と、世界(次元)をも行き来できるのではないのかな。

備考:2005年1月、ブッキングより復刊。 【Amazon】(2005/2/22)

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