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美しい水死人/G・ガルシア=マルケス

美しい水死人
ガブリエル・ガルシア=マルケス

My評価★★★★★

訳:木村榮一
福武文庫『美しい水死人 ラテンアメリカ文学アンソロジー 』(1995年3月)所収[廃版]
ISBN4-8288-5713-3 【Amazon


ある日、カリブ海の荒れ果てた島に、男の水死体が流れ着いた。
村人たちはよそ者の水死体を囲み、男たちは近隣の村々へ行方不明者がいないか訪ねて行き、女たちは水死体をきれいに洗って葬儀の準備をはじめた。
女たちは大きな体躯で美しい水死体に心を奪われ、きっと「エステーバン」という名前に違いないと思いはじめる。そして各人各様に生前のエステーバンの姿を思い描いた。

戻って来た男たちから水死体の身元が判明しないことを伝えられた女たちは、はしゃぎながら死体に様々な聖具や飾りをつけてやる。
男たちはそんな女たちを不信に思ってやめさせようとするが、美しい水死人を見て、彼のためにこれ以上ないほど立派な葬式を執り行う。そうして、美しい水死人が村人たちや島に変容をもたらした。

********************

エステーバンと名付けられた水死体は、島で細々と暮らす村人の鬱憤を晴らすための「憑巫(よりまし)」というべき存在でしょうか。彼の葬儀が執り行われることによって、村人たちは憑物が落ちたかのように思われるほど、晴れ晴れとした心持ちになるんです。
水死体にエステーバンと名付けたときから、死体は村人の所有物になり、終いには神話化・神格化され、信仰の対象というべき存在になるんです。エステーバンは村人にとっての聖人、聖遺骨といったところ。

貧しく閑散として活気のない村にとって、エステーバンという神話が生きる拠り所となったよう。大男の彼のために、村人たちは小さかった家の戸を大きく作り変え、明るい色のペンキを塗り、岸壁に花の種を植えて飾ろうと考える。あそこがエステーバンの村なのですよ、と船客に伝えることだろうことを夢みて。

誰の押し付けでもない自分たちで創りだした自分たちだけの神話と信仰の獲得と、それによる過去と未来への神話的時空間の拡がり・・・。それがたった10ページほどに凝縮されているのだから、見事としか言いようがありません。(2001/3/2)

備考:G・ガルシア=マルケスの短篇集『エレンディラ』(ちくま文庫)に収録されています 【Amazon】。

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