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族長の秋/G・ガルシア=マルケス

族長の秋
ガルシア=マルケス(ガブリエル・ガルシア=マルケス)

My評価★★★★★

訳・解説:鼓直
集英社文庫(1994年5月)
ISBN4-08-760235-4 【Amazon
原題:EL OTONO DEL PATRIARCA(1975)


ハゲタカの舞う大統領府を、民衆が不信に思い踏み込んだとき、150歳とも250歳ともいわれる大統領が死んでいた。その死体は予言にあったように床に伏して眠るようであった。だが、遺体は果たして大統領なのだろうか?いまでは大統領を見た者はいないからだ。
以前に大統領が死んだとき、彼は数日後に甦ったのだ。遺体は大統領の影武者だったという。

人々はこの未開の地を「国」にし法をつくった大統領である独裁者の偉業と、それに勝る数々の非道な振る舞いと彼の孤独を語る。
軍部や官僚を信じず、残虐さでもって応戦する。女帝に牛耳られた時期、アメリカへ海を売った生涯の失策。
清濁併せ持つ魅力で、民衆に口では称えられても憎まれていることを知っている独裁者。唯一心を許せるのは生母ベンディシオン・アルバラドのみ。
彼はたまたま大統領に就任して、独裁者となり国を整備した。だが、独裁者ですらも権力構造に取り入れられた傀儡でしかなかった     

********************

白紙ページが挟まれて六つに分かれているので、これを仮に章とします。遺体となった大統領の発見から、各章ごと語り手が替わります。つまり6人によって語られます。
6人が語る場合、対象に対して各人各様の視点、つまり6つの多面的な角度で語られるが普通ではないでしょうか。ところがこの作品の場合は、多面的な角度から語ってはいないような。
常に死体発見の状況から、大統領の身体的特徴を経て、彼の行いが語られるのです。しかし、語り手はいつしか死体発見者から大統領自身へと移行していき、彼(大統領)自身によって、残虐非道な振る舞いと最高権力者ゆえの孤独が語られます。

執拗なほどのイメージの繰り返しによって、大統領という人となりがスッカリ脳裏に焼きつけられました。
しかし同じイメージの繰り返しは飽きを齎すので、物語が若干長く感じられました。その上密度が濃いので、この作品は一気に読もうとせず、各章ごとジックリ読んだほうがいいと思います。
各章とも何度も同じようなイメージとプロセスが繰り返されているため、内容が代わり映えしないと思われるかもしれません。でも、実は微妙に変化しているんですね。
章を追うごとに時間的には多少前後しながら、国政のパースペクティブが拡がっていき、様々な人物を巻き込んでゆく。それはまるで、独裁者の大統領を中心に水紋が拡がっていくかのよう。しかしその水紋は逆転現象を起こしているかのようで、人々を巻き込みながら独裁者へと収斂していくのです。

前半では非道でありながらも意欲的に国を成立してゆく大統領の姿があり、国としてはいまだ未開地。
後半では文化的な国に整備されていくのですが、それとともに政治が腐敗していく。彼の意欲は減退し、ついには大統領という名の傀儡に成り果ててしまう。しかし、権力に阿る官僚らによって、彼は大統領であり続けなければならない。
権力を手中にしたとき、権力構造に取り込まれる。それは独裁者も官僚も例外ではない。権力を求めてそれを手にすると、今度は奪われることを恐れる。いつしか権力は個人の手を離れて、腐敗しながら膨張してゆく。虚構でありながら実際的な力を持つがゆえに腐敗する、という権力構造の欺瞞が暴かれていると思いました。

そして最高権力者である彼の孤独。
大きな足にイチジクほどの大きさに腫れた睾丸、ヘルニア、初体験の失敗よる異性への不安感から、彼は人を愛することを避ける。
レプラ患者を癒すといわれるその手で(直接手を下すのではないのですが)、将軍を食卓に供したり、2,000人の子どもを抹殺する。しかし、そんな彼も100歳を過ぎたころから迫りくる死に怯える。
ある程度の年齢に達すると、人は自分に残された時間を意識すると思います。彼も例外ではない。非道なことを平然と行ってきた彼ですが、老いてなお罪の意識を跳ね除けようとする。そして、全てを失い何も残らず何物(者)もない。
何も所有していないことを知ったがゆえに彼は初めて平穏になり、欲望と恐れ、全ての柵から解放されるのではないでしょうか。(2001/11/20)

追記:2011年4月、同文庫から改訂新版が刊行。 【Amazon

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