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ナイチンゲールは夜に歌う/ジョン・クロウリー

ナイチンゲールは夜に歌う
ジョン・クロウリー

My評価★★★☆

訳:浅倉久志
早川書房(1996年9月)
ISBN4-15-208028-0 【Amazon
原題:NOVELTY(1989)

収録作:ナイチンゲールは夜に歌う/時の偉業/青衣/ノヴェルティ


時間と創造に関わる中篇集。部分的にSF的ですが、全体としてはファンタジーだと思います。
それぞれが独立して完結した物語なのですが、作品順に読むと相互に繋がりのあることがありました。なかでも「時の偉業」と「青衣」は読み応えはありました。ですが正直な話、この作品集は私にはよく理解できませんでした。作者の用意した理論をうまく呑み込めないんですよねえ。
また、どの作品もどことは言えないのですが、なんとはなしに中途半端に終わっているように感じられました。しかしこの作品集を読むと、他の作品を含めてクロウリーが描こうとするテーマの方向性がわかるように思います。
これらの作品が執筆された年代はわからないので、もしかすると前後しているのかもしれませんが、この作品集から名作『エンジン・サマー』へと繋がっている印象を受けました。

ナイチンゲールは夜に歌う(The Nigbtingale Sings at Night)
デイム・カインド(母なる自然)が世界を創ったときには、いまだ「時間」というものが存在していなかった。またそのときは、どんなものにも名前がなかった。
デイム・カインドは「男の子」と「女の子」を創り、男の子と女の子は見るものすべてに名前を付けていった。
そして男の子と女の子は月によって知った「時間」というものを創造したがために、デイム・カインドの世界に時が流れて死が生まれた。

********************

男の子と女の子が名付けるまで、すべてのものには名前がなかったのに、「ナイチンゲール」という固有名詞が使われて物語が進むんです。さらに、まだ名付けてもいないのに男の子がサラマンダーを捕まえる。まだないはずの名前でもって語るのはやめてほしいなあ。
デイム・カインドによって創られたものがある時点=過去、まだ創られていない時点=現在となるのですが、ここではいまだ時間がないのではなくて、時間という概念・観念がないということではないかと思います。
男の子と女の子によって初めて死がもたらされたことを、どう解釈すればいいのか。時間は存在していても創られた時点から成長しないので、死というものがなかったということかな。死によって初めて時間というものが意識されたのかな。
でもまあ、理屈抜きに、神話的な世界創造の寓話として読むのがいちばんなのかも。

時の偉業(Great Work of Time)
大英帝国に存在する秘密組織<異胞団(アザーフッド)>は微妙な歴史を改変することで、大英帝国の版図を拡げて
完全な階級制と変化のない世界を目指していた。デニス・ウィンターセットは<異胞団>の会員として選ばれ、異胞団創立に大きく関わるセシル・ローズの生死に関与する。
しかし<異胞団>が歴史をごく微弱にでも干渉したために、未来に変化が起こってしまう。

********************

タイム・パラドックスとパラレルワールドを駆使した時間改変SF。この作品集のなかでは構成がハッキリしていて、物語としてまとまっていると思います。幻想的でファンタジックな究極の未来についてもっと語ってほしかった。
しかしガスパー・ライトの発明したタイムマシンとは、いったいどんなものなのだろう?
疑問に思うのは、<異胞団>はどうやって、セシル・ローズが決心を翻したパラレル・ワールドがあることを知ったのか。そのパラレル・ワールドへ行くことができたということなのでしょうが、いくつものパラレル・ワールドのうち、どうやって目的のパラレル・ワールドを選び到達することができるんだろう?そこまで追求しちゃいけないのかな。

青衣(Fn Blue)
<革命>によって時間を静止させた歴史のない世界。「時の偉業」とは逆の世界、もしくは<異胞団>の理念を推し進めた変化のない世界というところ。
そこでは青衣の幹部団が、人民の生活を援助していた。援助であって支配ではないというが、知識は青衣の者しか扱えないらしい。
青衣のヘアーは「行動場理論」に悩まされていた。やがてヘアーは行動場理論が行動場を支配し、その逆は成り立たない、と自分は信じていた。だが、実は行動場が行動場理論を支配していることに気づく。

********************

行動場理論とは簡単に言うと、未来はすでに決定したものであり、従って過去である現在に行うことは予め決定されていたことである、ということだと思います。
時間に置き換えると、未来が今現在に影響を与えているのではなく、今現在が未来に影響を与えている。前者では現在の時点でどんな選択をしても、予め定められたことなので選択にはならない。後者では未来は不確定なので、選択肢が存在することになる。
もっとも未来を知らないのにどうして行動場理論を信じることができるのか、私には不思議なのですが・・・。あと、革命についての詳しい説明がほしかったな。

ノヴェルティ(Novelty)
現代のとあるバー「第七聖人(セブンスセイント)バー&グリル」で、作家に突然アイディアが閃いた。それは"新奇なもの(ノヴェルティ)と堅実なもの(セキュアリティ)"だった。
作家は客の女やバーテンダーとたわいのない会話をしながも、アイデアを使って小説の構想を練る。

********************

訳者があとがきで触れているのですが、作家のアイデアである新奇なものと堅実なものが、作品集全体を通じてのテーマに違いない。
「ノヴェルティ」以外は、ノヴェルティの作家が創造した作品世界と考えることもできるのでは。とすれば、この本の中で最後に配置された作品ですが、時間的にはいちばん始めに当たるわけです。つまり円環構造ということ。
この作家をジョン・クローリーその人とみなすことも可能でしょう。(2001/4/15)

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