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サクソンの司教冠/ピーター・トレメイン

[修道女フィデルマ]サクソンの司教冠(ミトラ)
ピーター・トレメイン

My評価★★★★☆

訳:甲斐萬里江,解説:若竹七海
創元推理文庫(2012年3月)
ISBN978-4-488-21816-4 【Amazon
原題:SHROUD FOR THE ARCHBISHOP(1995)


サクソンの司教冠7世紀のアイルランドを舞台にしたケルト・ミステリー。今作はローマが舞台ですが。
フィデルマは教皇への謁見を賜るべく、ウィトビアからローマにやってきて滞在。時の教皇はウィタリアヌス。
エイダルフもウィガード司教のお供で、ウィガードのカンタベリー大司教叙任のためにローマに来ており、ラテラーノ宮殿に滞在していた。
だが、カンタベリーの大司教となるはずだったヴィガードが殺されてしまう。さらには、ヴィガードが持参した数々の高価な献上品が消えていた。
現場にいた外事局に勤めるアイルランド人修道士が、犯人として捕らえられた。
アイルランド人のフィデルマとサクソン人のエイダルフは、ヴァティカンの司教ゲラシウスから事件解明と献上品の探索を依頼される。
二人が指名されたのは、ウィトビアでの功績と政治的配慮からだった。

********************

原書では長篇第2作目。邦訳は順番がバラバラだったけど、これで5作まで出揃いました!
長篇を時系列にすると『死をもちて赦されん』→『サクソンの司教冠(ミトラ)』→『幼き子らよ、我がもとへ』『蛇、もっとも禍し』『蜘蛛の巣』となります。

第2作ということで、本作でのフィテルマは、性格的にまだ魅力が欠けるなあというところでした。いまだフィデルマはエイダルフへの恋を意識していません。かなり気になってはいるんだけどね。

ミステリーの趣向としては『死をもちて~』を踏襲しているところがありますが、それはともかくとして、私は面白かったです。いままでで一番良かったかも。
まず、一冊でまとまっているのが良かった。なにしろ慣れない文化のことなので、2分冊だと長く感じてしまい、あまりストーリーに集中できなかったんです。
『死をもちて~』は、宗教的なところがちょっと複雑すぎた。その点、今作は宗教的な部分が全面に出ておらず、いろいろ事件が起きるので飽きず、コンパクトにまとまっていると思います。

なんといっても舞台がローマ!かつて旅行したローマを思い出しながら、この場所はこの辺りかな?と楽しめました。
一番面白かったのは歴史的背景です。歴史好きだけではなく、ビブロフィリアも楽しめる内容だと思います。
物語は664年に設定されています。『死をもちて赦されん』での教会会議が664年の出来事であり、その直後だからです。ローマでフィデルマは、ローマ世界がイスラーム世界と対立していることを知ります。
主な歴史的事実を振り返ると、以下になります。

フィデルマのローマ滞在から30年ほど前(作中で触れられています)の632年、預言者ムハンマドが没しています。
641年にはイスラーム軍がアレクサンドリアを陥落。このときアレクサンドリアを脱出し、ローマに亡命した医師が作中に登場するのです。
661年、シリアのダマスクスにウマイヤ朝が成立。
東ローマ帝国の皇帝コンスタンス二世は、帝国の領土を次々にイスラーム軍に奪われてコンタンティノポリスを撤退。その後イタリアに遠征し、663年に教皇と会見(作中では、このとき皇帝がローマを荒らしていったことになっています)。
ちなみに日本の「白村江の戦い」は663年。
7世紀というと中国では唐の時代にあたり、インドへ旅して仏典を持ち帰って訳したことで知られる玄奘三蔵(三蔵法師)が没したのが664年です。

こうして考えてみると、7世紀というのは3大宗教がそれぞれに宗教的な事柄を発端に、アフロ・ユーラシア大陸でダイナミックな動きがあるんですよね。
人口移動が考えられるので、アイルランドや西欧、汎地中海世界、中央アジアなどのアフロ・ユーラシア大陸において、人口流動が活発だったのではないかな。人口移動に伴い、それぞれの文化も広がっていっただろうと思うのです。
なんだか私、歴史ヲタ化してる?

「サターナーリアの祭り」についても興味深かったです。
この祭りは、要するに「王子と乞食」の原点ということですよね?シェイクスピア戯曲での身分の入れ替わりは、元を辿っていくとサターナーリアの祭りに行き着くのかな?一日署長という発想も、こうしたところにあるのかな?
でも、よくよく考えると、これってフレイザーの『金枝篇』だ!などと考えると面白かったです。
ミステリーと関係ないところで面白がってました。(2012/4/12)

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