スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ターシャ・テューダーの人生/ハリー・デイヴィス

ターシャ・テューダーの人生
ハリー・デイヴィス

My評価★★★★☆

訳:相原真理子
文藝春秋(2001年11月)
ISBN4-16-357910-9 【Amazon
原題:The Art of Tasha Tudor(2000)


ハリー・デイヴィスは30年以上にわたるターシャ・テューダー研究家であり、ターシャのビジネス・パートナー。ターシャのプライベートを守るための世間との調整役でもあるとのこと。
彼は幼少時からターシャの絵に親しみ、長じてターシャと仕事をするようになったのだそうです。親族以外ではターシャに最も近しい人物ではないかと思われます。

本書では、他の本(写真集)ではほとんど語られることのなかった、ターシャ・テューダーのプライペートが語られています。写真集ではターシャのライフスタイルが文と共に紹介されていますが、それは読者が見たいターシャのスタイルでしかない。商業的にマイナスなイメージは取り除かれるので、ターシャの素顔を知ることはできないのです。極端に言えば、出版社による一種の虚像だと私は思っています。
しかし本書では、他では語られることのなかった生身のターシャを知ることができるのです。また、年代に沿ってターシャの絵が豊富に添えられているので、画風が変化していき完成されるまでがわかります。絵を見るだけでも充分に楽しめました。

テューダー家は数世代にわたり、ボストンの裕福な名家だったそうです。親交のあった人々にはエマソン、ソロー、ルイザ・M・オルコット、マーク・トウェイン、グラハム・ベル、アインシュタインなど、錚々たるメンバー。
ターシャの曽祖父はアイス・キングとして巨万の富を築き、世界的に知られる人物だそうです。曽祖父の父親はジョージ・ワシントンの側近で個人的にも親しく、ジョン・アダムズに法律を学び、米国初代法務総監を務めたそううです。名家だとは他の本にも書かれていたし、テューダー姓なので名家だとは思っていたけれど、これほどだとは思いませんでした。

ターシャが生まれるまでには、母親ロザモンドの離婚騒動と再婚、その後生まれた長男の死という複雑な経緯があります。デイヴィスは、ターシャが自分に自信を持てないのは、長男の死が関係していると考えています。私には、ターシャは両親に愛されていたとは言えないのではないか、と思われてなりません。
両親の離婚後、ターシャはミケルソン一家に預けられ、創造的な刺激を受ける。グエンおばさんことグエン・ミケルソンは、ナサニエル・ホーソーンの孫娘だって。

ターシャはキャラコブックスを出版した時期にアンデルセン童話集の挿絵を描きますが、デイヴィスによるとターシャが子どものころに好きだったエドマンド・デュラック、アーサー・ラッカム、ウィリアム・ヒース・ロビンソンらの影響が見られるとのこと。すべて19世紀末~20世紀初頭に活躍した、イギリス挿絵黄金時代の挿絵画家です。
兄のチャールズ・ロビンソンではなく、弟のヒースというのにはなんとなく納得。兄にはない(と思われる)ユーモアがヒースにはあるから。でもターシャはチャールズも好きだろうと思うのだけれど。

トム・マクレディとの結婚生活についても語られています。どうもターシャは、両親と夫には運がないような。一家の働き手はターシャであり、収入源は彼女の肩にかかるはめに。
4人の子どもを育て、名門校に入れたり留学させたりするために、お金には苦労したという。原画を付け値で売って、お金に換えていたそうです。ターシャにとって絵を描くことは収入を得るためであり、絵にすることによって自分の理想とするライフスタイルを構築していったようです。
子どもたちとの生活については、傍から見れば理想的な家族に思われるのですが、現実は必ずしもそうではなかったらしい。
長女のベサニーが「母はファンタジーの世界で私を育てたの。現実に対処する準備はさせてはくれなかったわ」(p64)とデイヴィスに洩らしたことがある。
ターシャの実生活は、なかなか思い通りにはいかなかったようです。

本書でハリー・デイヴィスが伝えたかったのは、とかく理想化されがちなターシャも「欠点もある生身の人間だということ」でしょう。
それは、彼女のライフスタイルが紹介されてファンが増大するにつれ、彼女のプライベートが侵されている事への危惧があるからだと思われます。商業主義に毒され、彼女が作り上げたコーギコテージでの生活が侵されることに、ターシャ自身が疲れを感じていることを伝えているからです。
また、彼女の絵が好きならば、作風について知ることができるので読んでおきたい本です。ターシャは90冊の本を出版しているそうですが、日本では絵本の翻訳出版はまだまだ少ないですね。ライフスタイルに関する本もいいのですが、彼女の手がけた絵本も翻訳出版してほしいものです。(2006/5/27)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。