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中国点描/横須賀薫

中国点描 くらしと教育
横須賀薫

My評価★★★☆

本の森(2003年11月)
ISBN4-938965-55-0 【Amazon

目次:中国点描/東北師範大学との交流10年と教育研究/中国における教師教育/中国の学校実験/「素質教育」を考える


著者は2000年8月、宮城教育大学学長に就任。専門は教育実践史、授業研究とそれを基礎にした教員養成論。
宮城教育大学と中国東北部の吉林省長春市にある東北師範大学は、1985年10月から姉妹校提携を結び、共同研究に励んでいるのだそうです。その関係で著者は、1987年~2001年までに5回訪中。そのうちの2回目(1990年9月~同年11月)は、文部省在外研究員として中国に派遣され、帰国後に書いたものをまとめたのが本著。

日中間で姉妹提携大学は少なくないようですが、民間レベルでどのようなことが取り組まれているのか、一般人にはあまり知られていないと思うんです。そうしたことも含めて、中国社会を窺い知ることができる内容なになっています。ただし10年以上前の話なので、現在とは状況が変わっていると思います。

本著の3分の2を占める「中国点描」は、24篇のエッセイから成るいわゆる見聞記。
たんなる観光旅行記に留まっておらず、中国の教育事情についてはもちろんのこと、旅行者の目から見た市井の人々の様子も書かれていて、これがなかなか面白いんですよ。日本にいると、特別な興味がない限り知ることができないんですよねえ。

窓口で飛行機のチケットを購入しようとするのですが、「没有」(めいよう)と言下に断られてしまった。チケットはあるはずなのに、売りたくないのだ。売っても自分の得にならないから、あるいは後で知り合いに頼まれるかもしれないので、売りたくないのだろうと解説しています。自分の得になる人にしか売らないのだろう、ということです。こんなこと日本では普通考えられない。

また、服務員(従業員)の無愛想さについて触れています。列車で客室乗務員(服務員)に茶を頼んでも、聞こえたのかどうか返事しない、表情を観てもわからないという。これはまだ良い方とのこと。ちなみに中国人は、蓋付の茶碗を持って乗るそうです。
列車運行中、洗面所の鍵がかかっていて(停車中は服務員が鍵を締めるのだけれど、開け忘れたのだ)、人が並んでいた。そこへ服務員が通りかかり鍵を開け、真っ先に自分が入って洗顔したという。しかも待っている人は誰も抗議しない。
こういった部分が、市場経済が導入され観光業が盛んとなった現在、どう変わったのでしょうね。変わらない部分があるとしたら、そこが良くも悪くも(いえ、良いとは思いませんが)中国人らしさなのではないのかな。

中国のリテラシー(識字能力)についても触れているのですが、中国には文盲よりももっと大きな問題があるという。
1970年代末からの改革開放とともに、一人っ子政策(この政策は法律として制定されたものではない)が実施されてきたのですが、これに伴い戸籍のない子どもが増えた。
農村では男子の跡継ぎを希望していても、一人しか子どもの戸籍をもうけることができないので、第一子が女の子の場合は戸籍に入れないのだとか。こういった子どもは「黒孩子」(闇の子ども)といわれ、教育・医療他行政サービスを受けることができない。
一説によると、当時の中国の人口は14億だが、内2億は戸籍を持たない人口だといわれるとのこと。一人っ子政策の裏面が見えます。
ただし、2002年9月に人口及び計画生育法という、一人っ子政策を見直した法律が施行されています。施行されてはいるのですが、その内容と効果はいかほどなのかは疑問に感じますね。

中国の大学生の就職制度にも触れており、就職先は学生自身が決めるのではなく、大学当局が決めて派遣・配属するのだそうです。そう聞くと強制的な制度と思われるのですが、実態はちょっと違うのだとか。ともあれ、本人の自由意志で決められないのは嫌だな。

著者が訪れた日本や日本軍の侵略跡地についても書かれています。吉林省共産党委員会の建物は「関東軍司令部」だったそうです。細菌部隊だった七三一部隊の建物の一棟は、「侵華日軍七三一部隊罪証陳列館」だという。
盧溝橋近くには「中国人民抗日記念館」があり、南京の「侵華日軍南京大虐殺遭難同胞記念館」の入り口には「遭難者300000」のプレートが掲げられているという。工事にのときに発掘された人骨が、そのまま展示されているのだそうです。各場所には中国人の見学客がいるという。
抗日闘争や南京大虐殺について中国では忘れられていないのですが、当代の日本人はどれほど知っているのでしょうか。日中国民間の歴史認識がズレるのも頷けるようです。

「東北師範大学との交流10年と教育研究」は研究全体の概要。この章以降は専門的な内容。
「中国における教師教育」は、中国の教師教育制度と教員資格制度についてのレポート。中国と日本各々の教育事情の違いが興味深かったです。
日本の場合、教員資格制度(教員免許法に拠る)と勤務評定制度(各地方教育行政単位の規則に拠る)とが分離しているのですが、中国では分離していないのだそうです。そして教師教育(教員養成と在職研修)機関があるという。
聞くところによると日本の大学にはそういう機関がほとんどないらしい。だが近年、FD(Faculty Development。教員の能力開発、教授能力の(訓練による)発展)への取り組みがあるとか。(2004/2/16)

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