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穴掘り公爵/ミック・ジャクソン

穴掘り公爵
ミック・ジャクソン

My評価★★★

訳:小山太一
新潮社CREST BOOKS(1998年9月)
ISBN4-10-590006-4 【Amazon
原題:The Underground Man(1997)


19世紀末頃、イギリスの老公爵による9月30日から翌年3月5日までの日記。著述の合間に、住民や屋敷の使用人による公爵像が語られます。
『作者付記』によると、実在した第5代ポーランド公ウィリアム・ジョン・キャヴェンディッシュ=ベンティック=スコットの生涯を下敷きに創作したとのこと。

広大な地所を有する老公爵が、地所の地下に複数のトンネルを造らせた。トンネルを造った理由は誰にもわからない。公爵は人目に触れず馬車でトンネルを通って、地上に出ることができた。
公爵は激しい痛みに襲われて寝込むようになるが、医者の診断はアテにならない。自分で医学書を見た判断では、どうやら肝臓結石らしい。ふと、なぜ体には取扱説明書がないのかと考える。自分の体はどうなってしまったのだろう?
公爵は体の構造に興味を持ち解剖図などを眺め、頭の中はどうなっているのかと考える。そして、骨相学の教授に会うためにエディンバラへと向う。
老公爵はかねてから一瞬の間、意識を失う発作があった。また幼いころ両親とともに海辺を通った記憶が、なぜか気になって仕方がない。しかし記憶には、何かが欠けていた。

********************

公爵は口数の少ない執事のクレメントに甲斐甲斐しく世話をされ、トンネル工事や体の激痛に苦しむ以外には、何ということのない日々を過ごすのです。その間、公爵にできることは考えることだけ。
公爵の日記によって、彼の考えていることが明らかになっていきます。また細々と記された日常生活から、公爵像が浮かび上がっていく。
一方では、公爵と関わった人物たちの証言による公爵像が語られ、かなり奇矯な人物と思われていることがわかります。
イギリスの小説によくある、ゆるやかな時間の流れる何ということのない生活描写が、ユーモアとエスプリを交えて積み重ねられてゆきます。秋から冬へと移り変わる田舎の風景描写も読みどころ。この時点での公爵は、ちょっと変わっていてボケ始めているじいさんという印象なのですが、憎めなくて愛嬌さえ感じられるんですよね。
また、どの登場人物も個性的で存在感がありました。なかには神がかり的な人物も登場するほど。人物ではないけれど、私はベリー・マンが好き。

この作品の本領は、公爵がエディンバラへ行く1月6日以降にあります。
のんびりとしたような物語なのですが、次第に悪夢じみてカタストロフィへと向ってゆく。その段階で、公爵がなぜトンネルを造ったのかが明らかに・・・。
改めて冒頭からこの結末に向かっていたことがわかり、綿密に構成されていると思いました。タイトルは邦題よりも原題『The Underground Man』のほうがしっくりしますね。Undergroundという言葉がポイント。
でも私は悪夢じみたエディンバラ以降の展開、なかでも結末が好みではないです。全く救いがないから。私としては一縷の希望が残された物語のほうが好きだな。私の好みは抜きにしても、ラストには好悪が分かれるかもしれません。

筆力があるのので総じて悪くはないのだけれど、どこがいいかと訊かれると、うーん・・・。構成にインパクトがなく、オチが使い古されている。いまさらこのオチ!?と思わずにはいられませんでした。(2002/4/30)

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