スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

眼球譚[初稿]/ジョルジュ・バタイユ

眼球譚[初稿]
G・バタイユ

My評価★★★★

訳・解説:生田耕作
河出文庫(2003年5月)
ISBN4-309-46227-8 【Amazon

目次:第一部 物語/第二部 暗号/W.-C. 『眼球譚』後序/『眼球譚』続篇腹案


16歳のときに語り手である少年は、同い年の少女シモーヌと出会った。排尿と玉子と自慰に恍惚となるシモーヌ二人は淫靡なフェティシズムの性を貪り合い、耽溺し、次第にエスカレートしてゆく。
そしておとなしい少女マルセルを巻き込む。精神の箍が外れたマルセルは、癲癇病院へ収容される。二人はマルセルを病院から密かに連れ出すが・・・。

二人はスペインで暮らす大金持ちのエドモンド卿の元へ向かった。前々からエドモンド卿が、シモーヌを囲い者にしたいと言っていたからだ。
所構わず貪りあう主人公とシモーヌ。それを見て発奮するエドモンド卿。三人の淫獣たち・・・。三人はマドリッドで闘牛を見学。シモーヌは死んだ闘牛の生の睾丸によって、エクスタシーに登りつめる。
セヴィリアで三人は教会へ入り、告解の僧侶を蹂躙する。そして・・・。

********************

フランスの思想家・文学者ジョルジュ・バタイユ(1897-1962)が、国立図書館員として働いていた1928年に、オーシュ卿名義で地下出版した作品。タイトルに[初稿]とあるのは、改稿版では全編に渡って異同があるからだそうです。

第一部は主に物語で、第二部はこの作品を書くキッカケとなったイメージが、作者の精神のどこからきたのかが自身によって語られていました。
「W.-C. 『眼球譚』後序」は、眼球譚より一年前に書かれた『W.-C.』という小品で、すでに眼玉について触れていたこと。眼玉へのこだわりは、盲人で身体不自由だった父親が発端となっていることに触れています。
『続篇腹案』では、35歳となったシモーヌが、拷問のための収容所へ辿り着く話を考えていたことを知れる。

絶対に実名では出版できなかったろうし、地下でなければ扱ってもらえなかったでしょう。悪く言えばエログロ。猥褻用語が炸裂する排尿嗜好と露出趣味、加虐嗜好趣味というフェティシズム。玉子・眼玉・睾丸というシンボリズムによって喚起される欲望。猥褻で冒瀆的行為によるエクスタシー。シモーヌは道徳や理性で抑圧された精神の軛を、何の罪悪感も感じずに軽々と超越してみせるのです。
そう、エクスタシーの書。当然エロティックなのですが、たんにエロスを喚起させるポルノかと言うと、まったくそんなことはないのです。作者は非常に理知的で、作品全体に渡って強烈な知性が感じられました。

シモーヌと語り手である少年は、様々な猥褻行為に耽け、終いには恐い者なしの状態へなっていく。
快楽     それは麻薬のように禁断症状を持ち、貪欲で果てしがない。行為がエスカレートすればするほど、ちょっとしたことでは最早満足できないので、渇望は増してゆく。残虐度こそ増すが常に刺激を渇望し、刺激によってのみ生を実感しようと堂々巡り・・・。彼らの精神は、いつまでも開放されることはないだろうと思います。
もっとも作者は精神の開放ではなく、快楽を求める状態にこそ、意味を求めたのではないかと思うのですが。

訳者が解説で一種の固定観念をめぐる精神分析風物語ともいえるだろう(p168)と語っているように、精神分析的な印象が強いです。
人の器官と感覚をめぐる物語なのですが、その点については私にはよくわかりませんでした。
それよりも、作者の意図するところとは違うように思うけれど、人はなぜ服を身に纏い、人前では裸になってはいけないのか。なぜ人前で排尿やセックスをしてはいけないのか。なぜ快楽を貪るためだけに生きてはいけないのか。また、死するほど恍惚となる快感を求めてはいけないのか。
人はなぜ快楽を求めるのか。あるいは求めてはいけないのか。
私たちは社会通念という、いわば道徳的戒律の枠組みの中で生きています。その枠組みの枷が外れたとき、何が隠されているのか?人間を獣以下の存在に落としめずにいるものは何なのだろう・・・。そうしたことを強く思わせる作品でした。(2003/6/10)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。