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白鳥湖/マーク・ヘルプリン

白鳥湖
マーク・ヘルプリン

My評価★★★★

訳:村上春樹
絵:クリス・ヴァン・オールズバーグ
河出書房新社(1991年12月)
ISBN4-309-20176-8 【Amazon
原題:SWAN LAKE(1989)


昔、山々の懐に抱かれた平穏な森に、老人と10歳の娘が住んでいた。ある日、娘は父と母を捜すために山を降りることを決意する。しかし老人は山に残るという。老人は平穏な山を降りて違う世界へ踏み込もうとする娘のために、彼自身の人生での出来事を語り始める。
それは老人が60歳ぐらいのときに、当時の皇帝に拝謁を賜った出来事。だが、それは老人と皇帝の二人だけの秘密の楽しみで、二人の付き合いを知る者は誰もいなかった。
やがて皇帝が亡くなり、幼い赤ん坊の皇子が玉座に据えられ、悪名高いフォン・ロートバルトが摂政役として帝国を牛耳る。先の皇帝はこうなることを見越して、老人に皇子の教育を任せられていた。いつの日か皇子がロートバルトの手から帝国を奪回すべく教育するように、しかもロートバルトに気づかれないようにと。

********************

原典はバレエのオデット姫で知られる『白鳥の湖』。白鳥の湖の内容を知らないので、原典とどのぐらい違うのかは何とも言えない。ただ、本作は現代人に向けた物語になっていると思う。一見して西欧の中世時代のような世界を舞台としながらも、西欧でも中世でもない。いつともどことも知れぬ世界となっているのは、時と場所に限定されない普遍的な真実あるいは生き方を書きたかったからではないのかな。

物語の中では、人工物の美を否定しているわけではないが、自然の美が絶対的な指標となっている。理想や希望が、我欲による謀や悪意に挫かれようとも、それでもなおあきらめない。そして、世の中には理性では推し量ることのできない変転や驚異があるという、とてもストレートなメッセージ性を秘めた作品。
ヘルブリンらしいストーリーテリングの才が窺える。何といっても「語り」が上手い(訳の巧さもある)。老人は幼い娘(あるいは読み手)にゆっくりと語りかける。それがポツリポツリとではなく、滑らかに語りかけているという印象が強く感じられる。
作者は、読者が登場人物に感情移入することを避けているかのよう。それは、読む側が一時の感情に左右されてほしくないからではないだろうか。老人の言葉から察するに、感情に惑わされず理性で判断することを求めているのではないかと思う。
ラストはヘルプリンらしく、「ここで終わるの!?」という終わり方をしている。すべてを語り切らないラストは、予定調和的な終わり方を拒否しているかのよう。そこから先は読者に委ねられるということなのかもしれない。何にしても力強く、希望を秘めたラストである。

C・V・オールズバーグによるオールカラーの挿画有り。ヘルプリンのストーリーが完全にメインとなっており、絵はなくてもいいのでは(たんに私の好みでないから)。ま、あってもいいんだけど。絵本と思われがちだけれど、分類上は絵本ではない(本来は外国文学の単行本扱い)。けれども大概の書店では、絵本のコーナーに置いているみたい。作者がマーク・ヘルプリンで、訳村上春樹訳なのだから、外文の棚の方がいいと思うんだけどなあ。(2004/10/10)

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