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エリュトゥラー海案内記/著者不詳

エリュトゥラー海案内記
著者不詳

My評価★★★★★

訳註:村川堅太郎
解説:増田義郎
中公文庫(2011年6月改版)
ISBN978-4-12-205504-9 【Amazon


エリュトゥラー海案内記紀元1世紀半ば頃(訳者によると40-70年頃)、エジプト・アレクサンドリアに住むギリシヤ人の貿易商によって書かれた、海上貿易の案内記。海上貿易商人及び水先案内人のための記録です。
エリュトゥラー海とは字義的には「紅い海(紅海)」を意味するそうですが、当時はインド洋、ペルシャ湾、紅海を含んだ海域の総称だったそうです。ただし、著者はベンガル湾も含めています。

西暦1~3世紀あたりの歴史や紀行の本を読んでいると、註釈の資料中に『エリュトゥラー海案内記』のタイトルが必ずといっていいほど挙げられているんです。当時の貿易品について知る上で欠かせない資料のようなのですが、長い間絶版で幻の珍書といわれていました。
1993年に中公文庫化したのですが絶版となり、改版されてようやく入手可能となったんです。

当時の世界交易はインドが中心地。南海貿易が世界の中心だったわけです。
世界交易路といえば内陸のシルクロードが有名ですが、「海のシルクロード」についての記述です。内陸路を利用しての貿易には限界があり、それよりもはるかに量的・時間的に物流を可能にしているのが海のシルクロードであり、海路が当時のメイン貿易路なのです。
海上貿易のルートと各地の貿易品(産出品)、当時の港湾都市や港町の様子、民族とその気質等についても触れられているのです。
中国-インド間は陸上ルート、インド-ローマ他ヨーロッパ間は海上ルートとなっています。船荷を積むためには、陸上を通って港湾地に集荷しなければならないからです。海上貿易についての本ではありますが、陸上ルートについての記述も非常に興味深い。

最も重要なのは貿易品目。どこで何が産出されているかを知ることで、その国なり町の経済力を推し量る目安になり、その品の物流を辿ることで文化的・経済的交流がみえてくる。品目と、何がどこを通って、どこと交易しているのかを知ることができるのです。そこから朧げながら当時の世界が浮かび上がってくるんです。
本人の体験と、人から聞いた話がまとめられていて、後者は信用性が薄いとのこと。明らかにこれはおかしいな、という箇所もあります。ですがそうした部分を含めて、筆者をはじめとする当時の人の世界観がうかがえ、なかなか興味深いものがありました。私的には頗る面白い本でした。

索引を含めて全体で310ページですが、本文はたった43ページしかないんですよ!本の半分ほどを註釈が占め、残りは序説や地図など。
村川堅太郎(1907-1991)による東西の資料を駆使した詳細な註釈があってこそ本文を理解できるわけで、註釈がなければとてもじゃないけれど素人の手に負えません。註釈あってこその本。なにしろ町の名前がいまとは違うのだから。
この本に記されているけれど、後世に忘れられて場所がわからなくなっている港町は少なくないのですが、そのなかで近年になって同定できた町が実際にあるんですよ。
古代の中国とインド、そしてローマについて知る上で、非常に貴重な資料でした。古代史に興味があるなら一度は読んでおきたい本です。(2012/6/3)

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