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ゴールデン・フライヤーズ奇談/J・S・レ・ファニュ

ゴールデン・フライヤーズ奇談
J・S・レ・ファニュ

My評価★★★

訳:室谷洋三
福武文庫(1990年7月)[廃版]
ISBN4-8288-3149-5 【Amazon
原題:Chronicles of Golden Friars(1871)


近世イギリスの山に囲まれた湖畔の町「ゴールデン・フライヤーズ」で起こる怪事件。
居酒屋「ジョージと竜」の常連たちは、名門マーダイクス家のベイル准男爵の噂をしていた。長らく外国へ行っていた准男爵が、近々戻って来ると言うのだ。准男爵の帰還によって、人々は90年ほど前の忌まわしい事件を思い出していた。

90年前、時の当主ジャスパー・マーダイクス准男爵は、親しくしていたフェルトラム家から、20歳以上年下の娘メアリーを娶った。
そののち、メアリーは邸を逃げ出さざるを得なくなった。上の子は「ジョージと竜」に預けられたが、メアリーと下の子は行方知れず。その後のことだった、湖に赤子を抱えた女の幽霊が出るようになったのは!
やがてフェルトラムの財産はすべてマーダイクス家のものとなった。

「ジョージと竜」に預けられた上の子の曾孫にあたるのが、現在の准男爵ベイルの秘書フィリップ・フェルトラムだった。仕えさせられていたと言ってよい。フィリップには行き場がなく、お金もなかった。本来ならフィリップが受け取るはずの信託財産を、ベイル准男爵が押さえていた。
折りしもベイル准男爵の100ポンドが紛失し、ベイルはフィリップが犯人だと決めつける。心やさしいフィリップは理不尽な仕打ちに傷つき、嵐の夜に邸を出て行った。
紛失した100ボンドはベイル准男爵が別の場所に置いて忘れていたのだが、ベイルはそのことをフィリップに打ち明けて謝罪しようとはしなかった。

フィリップは意外な姿で戻って来て、人が変わり、冷酷で慇懃になっていた。
フィリップは言葉巧みにベイル准男爵をも森へ誘い出す。フィリップの案内で、湖を渡り森の奥でベイル准男爵が出会ったのは、スチュアート朝の末期、アン女王の御代に流行した煌びやかで豪奢だが時代遅れの服装をした老人と、仮面を付けた黒衣の若き貴婦人だった。老人と貴婦人は何者なのか。フィリップの企みとは?

********************

アイルランド・ダブリンの作家ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ(1814-1873)による怪奇小説。ちっとも恐くなかったけど。怨念物語、復讐譚と言えばいいか。
訳者あとがきによると、「ゴールデン・フライヤーズ」と呼ばれる架空の地を舞台にした物語は三つあり、それぞれ登場人物も筋立ても異なるそうです。共通しているのはゴールデン・フライヤーズで起こった出来事という点だという。その三つの物語のうちの一つ『The Haunted Baronet』が本作。

神話と伝説、そして因縁といったアイルランドの空気が濃厚でした。
ベイル准男爵がフィリップの案内で森の奥へ分け入って老人のもとへ辿り着くとき、ベイルはそれと知らずある種の境界を越えるのですが、いかにもアイルランド的な仕掛けが施されています。この箇所はほとんどファンタジーといった感じ。
「アイルランド(ケルト伝説)」、「湖」、「渡し船」ときたら、すでに種が明かされたようなもの。この三つのキーワードが解けないと、読了後に説明不足と感じるかもしれません。

私はもったいぶった遠まわしな言い回しがうざったかったけど、これは訳の問題ではなく、おそらく原文によるのではないかと思います。たぶん時代性なのでしょう。
疑問に思ったことは、なぜ90年も経ってから事件が起こるかなあ。好意的に解釈すれば引き金となるファクターが集積したからだろうけど、要するに亡霊もゴールデン・フライヤーズの人々も、いまだに事件を忘れないほどしつこいんだな。自分たちの歴史を埋もれさせず大切に引き継いでいるとも言うけど。
個人的には、ゴールデン・フライヤーズ町(村という感じだけど)で暮らしている個性的な人々を登場させてほしかったな。(2002/5/25)

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