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ベーオウルフ/ローズマリー・サトクリフ

ベーオウルフ
ローズマリー・サトクリフ

My評価★★★★

訳:井辻明美
カバー画:山田章博
沖積舎(1990年8月)
ISBN4-8060-3011-2 【Amazon


キード(スウェーデンの一部族)の王ハイジェラックの館へ交易船の船長から、デーンの民(デンマーク人)の王フローズガールが壮大な館を建立したことが伝えられた。しかもフローズガールの館は、夜な夜な<夜の徘徊者>人狼グレンデルに襲われているという。
ハイジェラック王の甥ベーオウルフは昔の恩義を返すために、14人の剣の兄弟を引き連れて、海を越えてフローズガール王の館へ赴く。しかし敵は人狼だけではなかった!

50年の歳月が経ち、ベーオウルフ王治世による平穏な国で、古代の宝に囲まれて眠り続けていた竜が目覚めた。忍び込んだ人間に、財宝を掠め取られたからだった。怒り狂った竜は、国土を炎で焼き尽くす。
ベーオウルフは竜退治に12人の護衛を連れ、財宝を盗んだ男を13人目の道案内とした。老いたる王は竜との戦いに死力を尽くすが・・・。

********************

中世イングランド英雄叙事詩を、原典の骨子を生かしつつ現代の読者向けにわかりやすく書いた物語。井辻明美さんの香気溢れる訳がいいですね。
おそらく原典に忠実であろう岩波文庫の忍足欣四郎訳【Amazon】を併せて読むことをオススメ。どう読もうと個人の自由ですが、叙事詩もサトクリフの物語もファンタジーでないことがわかると思います。
ベーオウルフはスカンジナヴィア伝説を題材にしているため北欧文学と考えるのが妥当でしょうが、岩波文庫の解説によると大英図書館に収蔵されている原典(といっても写本)は古英語で書かれているのだそうです。写本の前半部は十二世紀半ば、後半部は十世紀の終わりごろに作成されたと考えられているとのこと。原本が作られたのは八世紀ではないかと考えられているのだそうだ。
岩波文庫を読むと、この叙事詩はキリスト教観念に基づいているんですよ。ベーオウルフに女っ気がないのはそのためではないのかなと思うのですが。

サトクリフはグレンデル退治と竜退治を軸に、岩波文庫版では頻繁に前後している時系列と登場人物を整理しています。そしてキリスト教色を大部分払拭。
サトクリフと岩波文庫を比べてみると、サトクリフが何を書きたかったのか、サトクリフという作家の資質が見えてくるように思います。ベーオウルフは寛容で高潔な武士(もののふ)として描かれていて、人間の徳性を書きたかったのでは、と私には思えるのです。叙事詩のムードを損なうことなく人間の物語として書いてみせた、というところではないでしょうか。

備考:沖積舎ではもしかすると絶版かもしれません。2002年9月、同井辻明美訳で原書房【Amazon】から刊行されています。(2006/11/7)

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