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モンティニーの狼男爵/佐藤亜紀

モンティニーの狼男爵
佐藤亜紀

My評価★★★★

解説:小谷真理
カバー画:ビアズレー
光文社文庫(2001年10月)
ISBN4-334-73222-4 【Amazon


革命前夜のパリから遠く離れた田舎町モンティニー。領主のラウール・ド・モンティニー男爵は内気で人見知りだが、狼狩りの達人だった。彼は母親亡き後、パリに住む叔父の後押しで領地を継ぎ、狩りをして気ままに過ごしていた。だが突如、叔父にパリに呼びつけられ、結婚の準備が始まった。
相手は尼僧院に預けられた由緒ある家柄の娘ドニーズ。ドニーズには多額の持参金が付けられていて、叔父たちの目当ては持参金だった。

ラウールは一目会ったときからドニーズを愛するが、彼女に拒否されるのが恐くて「愛している」と言えずにいた。月日が経ち、二人の間に子どもが産まれる。ドニーズは、パリから来ていた遊蕩者ギョーム・ルナルダンと出会う。
モンティニー家には凄惨な歴史があった。ラウールの先祖、ダゴベール・ド・モンティニーは、不貞をはたらいた妻を幽閉し、相手の男を壁に生き埋めにしたのだった。そして妻に呪いをかけたと伝えられる。
ラウールは先祖の二の舞を踏まないよう理性を保とうとするが・・・。

********************

18世紀のフランスの一地方を舞台にした、まろやかな恋愛小説。
ラウールとドニーズは、美男美女ではなく才気煥発でもない、どこにでもいそうな地味なカップル。
自分が好きになったとき、相手は自分のことをどう思っているのか?それは誰もが気になるところ。作者はそこに中世の伝承を盛り込むことによって、近代的な人間性を浮き上がらせていると思います。

ラウールはドニーズと結婚して、内心の不安を見て見ぬふりをして満ち足りていた。ラウールが見ていたのは、彼自身の願望によるドニーズ像でしょう。
例えば恋愛期間は何事もなく幸せに過ごし、一緒に暮らしたときになってある種の幻滅を味わう人がいますよね。それは現実の生身の相手そのものを見ているのではなく、「こうであってほしい」という自分自身の願望(理想)という欲目で見ているからではないかと思うんです。だから理想とは違う部分を眼にしても意識に遡上しない。あるいは捻じ曲げて自分に都合よく解釈する。
ところがそれは表装意識のことであって、深層意識では知っているわけですよね。ラウールはそういう状態ではないかと思うんです。

ルナルダン氏の登場によって、ラウールはドニーズが自分のことをどう思っているのか気になリはじめます。つまりドニーズ像からドニーズ本人へと認識を転換する。深層意識を認めることで表装意識との溝がなくなり、ラウールは開放感を得るのでは。しかしドニーズが彼のことを愛しているかどうか、という問題は残る。そのためフラストレーションが生じ、ラウールの身に変化がおこる・・・じゃないかな。
彼の身におこったことは、彼が無意識に選択した現実逃避のようなもの。無意識にしろ自身の選択によるからこそ、ラウールは人間性を失わないのだと思う。
現代では彼の身におこった伝承の抜本的な原因は精神失調によるもので、遺伝子的な要素があると考えられています。その点はダゴベールの存在で補強されています。
中世のダゴベールの時代と近世のラウールの時代の違いは、彼らの行動の違いでも明らかなように、思考にあるのような気がします。ラウールが「どう行動するか」ではなく、「どう考えるか」。

でも、読んでいる間は理屈ぽいことは抜きにして、異色の恋愛譚として楽しみました。私はラウールよりドニーズのほうが個性的で魅力を感じますね。(2001/10/31)

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