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ウッツ男爵/ブルース・チャトウィン

ウッツ男爵
ブルース・チャトウィン

My評価★★★★

訳:池内紀
文藝春秋(1993年9月)[絶版]
ISBN4-16-314200-2 【Amazon】
原題:UTZ(1988)


1967年、プラハの春の一年前に、取材のためにプラハに滞在した私は、マイセン磁器の蒐集家であるウッツ男爵を紹介された。コレクションを見せてもらった私は、その数と質に賛嘆する。そんな彼の住居には、女中のマルタがいた。

ウッツにはドイツ人の父親とユダヤ人の母親、裕福な祖母がいた。親族が亡くなって財産を継いだウッツは、ナチス・ドイツ時代にはドイツ人として、ゲーリングが指揮した芸術蒐集に手を貸していたと噂される。その引き換えにユダヤ人を救っていたらしい。ウッツは戦後にドイツのバスポートを手放してチェコ国籍を手に入れる。

1974年3月、私の元にウッツが心臓発作で亡くなったという訃報が届く。時が経ち、再びプラハを訪れた私は、ウッツの死後にコレクションがどうなったのか知りたいと思った。
だがコレクションは、ウッツの葬儀の後に跡形もなく消え失せていた。誰がなぜ?コレクションの行方を探るうちに、私はウッツとマルタの生活に触れる。

********************

副題『ある蒐集家の物語』。
ウッツ男爵の人生から、「蒐集家」とはどういう人間なのかを浮かび上がる。後半では蒐集にとり憑かれた人間として、ウッツ男爵の人生が語られます。
ナチス・ドイツ時代、ウッツなりにユダヤ人を救うエピソードがこの物語の深みになっていて、歴史小説として堪能できるのですが、そこに洋磁器コレクションとコレクターの話が相俟って、より陰影のある小説になっていると思います。

私は当時のプラハの様子や、マイセン陶磁器についてのウンチクが興味深かったです。
ウッツはマイセン磁器の中でも、特にマイセン人形を多く所持しており、作中に挙げられた品目だけでコレクションの凄さがわかるというもの。
彼のコレクションは個人財産と判断され、国家に押収されて美術館に保管されるはずだったのですが、磁器は容器として家計必需品にもなるのだそうです。陶磁器の像を押収すると、レーニンの石膏像も押収しなければならない。
そこで陶磁器の一個一個に番号が刻印されて写真が撮られ、台帳に登録される。持ち出しは禁止。所持者亡き後は美術館に寄贈しなければならない。

土から造られたアダム=やきもの説とゴーレムの話とか、ベトガーの赤と白の磁器が錬金術師の赤の石(銀)と白の石(金)のチンキに相当することなど、面白かったです。
18世紀の人々は、錬金術の過程で生まれた磁器に魔術の護符的な意味を持たせていたのですね。磁器は不死の妙薬であり、宮殿に埋められた磁器は、衰滅と死を防ぐためだったとか。
また、1923年にドイツがインフレになったとき、ドレスデン銀行が赤と白のベトガー磁器の貨幣を作った等々。サザビーズ勤務という経歴を持つ作者ならではのウンチクは一読に価します。洋磁器に興味のある人なら楽しめる作品です。(2001/12/12)

追記:1992年、英仏独合作で、タイトル『マイセン幻影』として映画化。監督ジョルジュ・シュルイツァー、主演アーミン・ミューラー・スタール。同年、ベルリン映画祭最優秀主演男優賞受賞。
いい出来の映画なのですが、コレクターのマニアックさがだいぶ抑えられているためか、全体にあっさりした印象を受けました。

追記:2014年9月、白水uプックス【Amazon】から刊行。

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