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家守綺譚/梨木香歩

家守綺譚
梨木香歩

My評価★★★★★

新潮社(2004年1月)
ISBN4-10-4299030 【Amazon


駆け出しの文筆家・綿貫征四郎は、亡き友人の実家を預かることになり、池付きの庭のある二階建て日本家屋で暮らしている。
ある日、亡くなった友人の高堂が、床の間の掛け軸を通って現れる。また、犬のゴローが住み着く。
主人公が遭遇する草木花・河童・タヌキなど、自然界に生きるものたちが織り成す摩訶不思議な出来事。サルスベリの恋慕、けけけっと笑うヒツジグサ、河童の抜け殻、タツノオトシゴを孕む白木蓮。厄除け売りの札屋、竜田姫、浅井姫、花鬼・・・。
四季折々の花の名前を各章題として、人外のものたちとの交歓が綴られる。およそ百年ほど前の物語。

********************

風や雨垂れの音、ほろほろと咲き散る花々、ゆるゆると過ぎてゆく四季。
昔は人と自然き近接な関係にあり、自然界の声を聴く耳をもっていたのでしょうね。そこから異界を身近に感じることができたのかもしれません。そんな時代が書かれていて、まさに「綺譚」としか言いようのない作品でした。
ゆったりと語られるムードが心地よく、読後は穏やかな気持ちになり、ほーっと息をつきたくなる。満足半分憧れ半分、溜息ちょっぴり。な
ぜかとても懐かしく感じるのですが、この懐かしさは郷愁なのかも。なぜなら自然を身近に感じて暮らす環境とは無縁だから、ゆるりとした時間の中で過ごすことができないから。
コンクリートに囲まれて自然から切り離された生活、しかも人と人同士が孤立して暮らしている現代において、作中で語られる環境はあまりにも遠い。それが憧れと溜息の理由。

サルスベリ、犬のゴロー、何でも知っている隣家のおかみさんなど、脇役陣が個性的。ゴローが河童に惚れられるのが可笑しい。
特に可笑しかったのは、主人公がサルスベリに惚れられるところ。それと、彼がゴローの現れ方を見て、おまえは何者なのかととりすがって聞き糺したい気分に襲われた箇所。
語り手の征四郎は、飄々としているのか図太いのかよくわからないけど、ときにごく普通の人と同じような反応をするので親しみやすい。
これだけは言えるのは、彼には見栄がないということ。見栄は欲を生み、欲は人の目を曇らし、本来なら見えるものも見えなくしてしまう。彼は見栄を張ることがないから、様々な異形のものたちに親しまれるのではないのでしょうか。

作中では人もまた自然界の一員であり、人だけが傑出しているのではなく、自然界に生ききるすべてのものが対等な関係にあるようです。
自然界に生きるものたちは互いに相手を認め合い、決して卑しめたり貶めたりしない。ケンカをしても、仲裁者の意見に耳を傾ける謙虚さを失わない。異種族であれ受け入れる寛容さがあるのですね。

時代背景は『木槿』の章で、1890(明治23)年9月16に起こったトルコのエルトゥール号難破事件が「先年」となっているので、明治23年以降。
義援金を募った山田寅次郎が単身トルコへ渡ったのが1892(明治25)年4月だから、おそらくは寅次郎の尽力によって両国の交流が盛んになり、日本から考古学者が招聘されたのではないかと想像。従って明治25年以降ではないかと思われます。

カバーもいいのですが造本がとても素敵で、カバーを外すと表紙は鴇色。見返しは神坂雪佳 (1866-1942)の画『白鷺』と『巴の雪』という贅沢さ。さすがに和装本ではなけれど、今時の単行本としてはしっとりと味わいのある装丁が嬉しい。(2004/5/7)

追記:2006年9月、新潮文庫化【Amazon】。

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