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ラサリーリョ・デ・トルメスの新しい遍歴/カミロ・ホセ・セラ

ラサリーリョ・デ・トルメスの新しい遍歴
カミロ・ホセ・セラ

My評価★★★

訳:有本紀明
講談社(1992年8月)
ISBN4-06-205964-9 【Amazon
原題:Nuevas andanzas y desventuras de Lazarillo de Tormes(1944)


後半生を都市で暮らし、遺すべきものもなく老いたラサロ(ラサリーリョ)の回想記。
母親を亡くして孤児となったラサロは、山で貧しい羊飼いに育てられた。金を貯めて山を飛び出した彼は、旅する3人の楽師と出会う。とある村で楽師たちは、ちょっとしたウソによって献金を得るが、その金が元で仲違いしてしまう。

次にラサロは悔悛者フェリペと出会う。フエリペはラサロを教育し、息子のように慈しむ。
やがてラサロは旅芸人の一座に仕えるが、彼らのいやしさに暗然とする。そして慈悲深いドン・フェデリコの館に駆け込む。だが安寧とした生活を長く享受することはできず、再びラサロは放浪の旅に出る。薬剤師に仕えるが給金を支払ってもらえない。ラサロは騙すよりも騙される方を選ぶ。
彼は占い師で祈祷師の老婆に仕える。悪魔祓いの老婆を巡って、村で畏敬と侮蔑の念が入れ乱れているのをラサロは目の当たりにする。

********************

スペインの作家カミロ・ホセ・セラ(1916-2002)は、1989年にノーベル文学賞を受賞。
訳者あとがきによると、この作品は1554年に書かれた作者不詳のピカレスク小説『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯、およびその幸運と不運』を下地にしているのだそうです。岩波文庫から『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』のタイトルで刊行されているのですが、現在は入手困難。
下地となった小説は未読なのですが、それでも何ら問題はなかったです。でも読んでいたら、違う感想を抱いたかもしれません。
ちなみに「ピカロ」とは男性形で、悪党・悪漢という意味。女性形は「ピカラ」になるそうです。

ピカレスク小説と呼ぶにはちょっと抵抗がありました。ラサロのピカロさにインパクトがなく、全体的な雰囲気が結構アッサリしていて、アッサリと終わってしまったような・・・。物語の核というべきものが感じられず、私には求心力が感じられなかったんです。

孤児の主人公ラサロは、仕える主人を求めて遍歴を重ねます。彼の才覚では独り立ちすることができないので、誰かに仕えるしかない。本心では定住したいのだけれど、なぜか一箇所に留まることができない。
ラサロが出会う人々は、良い人ところもあれば狡賢いところもあり、彼は親切にされると同時に騙されたりする。そのうちに賢く立ち回るようになるが、本心では常に誠実であろうとするねですが、それが表面的なように感じられ、本心から苦悩しているように感じられなかったんです。

ラサロと出会う多くの人々は、個々に内在する善意と悪意(狡賢さ)が、状況によって微妙に変化するんです。人間の本質は必ずしも善ばかりではなく、己の利害に関わる場合に多くの人々は狭量となり、さほど意識せずに狡猾になるのかもしれません。
貧困は人々を殺伐とさせるけれども、社会を告発しているのでも政治的解決を求めているのでもない。作者は人間が持つ狭量さ・狡猾さを社会的因果関係だけに求めてはいないような。淡々と微妙なニュアンスで書かれているので、受け止め方は人によって異なるんじゃないかな。
でも、人は全く社会とが無縁ではいられない。ラサロはマドリードでコミュニティーに属して生活上の恩恵を浴するのですが、肉体と共に精神的な自由を失う。なぜ彼は自由を失ったのか?しかし、それ以前のラサロは確かにコミュニティーに属してはいなかったけれど、本当に自由であったのだろうか。(2003/1/10)

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