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クジラの島の少女/ウィティ・イヒマエラ

クジラの島の少女
ウィティ・イヒマエラ

My評価★★★☆

訳:澤田真一+サワダ・ハンナ・ジョイ
角川BOOK PLUS(2003年7月)
ISBN4-04-897039-9 【Amazon
原題:The Whale Rider(1987)


ニュージーランドの海辺の村ファンガラで、女の子が産まれた。マオリ族のしきたりでは指導者の地位は世襲制で、マナ(権威・力)は長男から長男へと受け継がれる。
現指導者のコロ・アピアナ(コロは「おじいちゃん」の意)は、生まれた初曾孫が女の子だったので、後継者を得られないため素直に喜べない。
ナニー・フラワーズ(ナニーは「おばあちゃん」の意)はコロを尻目に、赤ん坊に「カフ」と名付けた。マオリ族の始祖で英雄のカフティア・テ・ランギ(パイケア)にちなんだ名だった。
パイケアはティプア(神の使い)クジラにまたがり海から来た、最初の「ホエールライダー(クジラ乗り)」だという。彼らの時代には少数ながらクジラと話す能力があり、パイケアもその一人だった。だが、いまではクジラと話す能力は失われてしまった。

カフはコロを慕うが、コロが欲しているのは自分の後継者となる男の子。そのためカフに対してどうしてもやさしくできない。
彼はもはや長子にこだわらず、村の少年たちの中から後継者を探し始める。そしてマオリの歴史・伝統・言語を絶やすまいと、男たちを集めて定期的に講習会を開き、持てる知識を伝授する。女人禁制の講習会だが、カフはこっそり覗く。

物語の語り手であるラウィリ(カフの叔父、つまりコロの孫)は、オーストラリアとハプア・ニューギニアで数年を過ごす。白人による原住民蔑視の現状を憂慮しながら、ラウィリは次々と押し寄せる新しいテクノロジーに村人たちが対応できるのか?これからも部族は、マオリであり続けることができるのかと考える。そうして彼は村へ帰って来た。

カフが8歳になった冬、200頭のクジラの群れが海岸へ打ち上げられた。そのときコロは土地紛争の裁判のために留守にしていた。翌日、今度はファンガラの海岸にクジラが打ち上げられた!

********************

ウィティ・イヒマエラ(1944年生まれ)はニュージーランドの国民的作家で、現代マオリ文学の第一人者なのだとか。
オークランド大学を中退し新聞記者を務めた後、再び学究生活に戻りビクトリア大学を卒業。1972年に発表した作品が首相の目にとまり外交官に起用され、アメリカでの大使館勤務に派遣されたという。
本作は1987年に発表され、2002年にニュージーランドの女性監督ニキ・カーロによって映画化。

男たちから尊敬されるコロだけれど、妻のナニーにはやられっ放し。豪傑なナニーの言動が面白可笑しい。ナニーは一枚も二枚も上手で口も達者なので、男たちは頭が上がらない。こんなおばあちゃんがいたら楽しいでしょうね。でも夫にとっては大変だろうな。

マオリはニュージーランドの先住民族で、海洋民族。祖先はポリネシアから渡来。
ニュージーランドは海洋貿易ルートの主要拠点に位置するため、近世以来、西欧の影響を受け続けている国なのだそうです。近年まではイギリスの植民地政策下にありました。土地所有権問題は、いまでも紛争が続いているという。
作中の青年たちが何もせずにブラブラしている印象を受けるのですが、なんと、マオリの失業率は40%だとか。

この作品を読んで「神話的ファンタジー」と思う人がいるかもしれません。どう読もうと人それぞれですが、主題は民族的アイデンティティにあります。
西欧文明の影響を受け続けてきたマオリは、民族固有の文化・言語の危機に直面しているようです。生活環境の欧化、新たなテクノロジーの流入によるライフスタイルの変化、そういった状況が背景として書かれています。この作品では触れていないけれど、ヨーロッパ系人種との混血もいるのですね。

海洋民族のマオリであり続けながら、新たな時代に対応すべく、新しい指導者を求める声。そこにカフが現れます。カフはマオリの魂の化身、部族を救う希望の星と言えるかもしれません。少女カフの存在は、男性優位に固執するマオリ社会への価値観の転換を突きつけているかのようです。
大切なのは「ホエールライダー」になることではなく、ホエールライダーになろうとする「マオリ」であり続けること。海あってこそのマオリなのだから。ホエールライダーはあくまでも象徴なのだと思います。(2003/8/21)

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