スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

毒味役/ピーター・エルブリング

毒味役
ピーター・エルブリング

My評価★★☆

訳:鈴木主税
早川書房(2002年8月)
ISBN4-15-208436-7 【Amazon
原題:The Food Taster(2002)


ピーター・エルブリングが、トスカーナ地方で入手した『ウーゴ・ディフォンテの手記』を翻訳、という趣向で書かれた小説。
舞台は16世紀イタリア、トスカーナ州とウンブリア州とマルケ州の境界に位置するコルソーリ市(架空の市)。
貧しい羊飼いの家に生まれたウーゴは、愛する母親が不治の病を悲嘆して自殺した後、父親と兄と暮らしていた。だが、父と兄はウーゴを邪見に扱う。
ウーゴは14歳のときに家を飛び出した。やがて結婚し、娘ミランダをもうけた。
農夫となったウーゴは、ふとしたことで領主フェデリーコの不興を買う。フェデリーコは、ウーゴを毒味役として城に連れ帰ることに。美食家だが多くの敵を持つフェデリーコは毒殺を恐れていたのだった。
ウーゴはミランダとともに城で暮らし、ある約束によって召使の少年トマーゾの助力を得る。

ある日、ウーゴは我知らずにフェデリーコの命を救う。以来、ウーゴは自分が生き延びるために、毒について研究し始める。
フェデリーコのお供でミラノへ向うウーゴ。それはフェデリーコが新たな妻となる女性と出会うための旅だった。帰国したウーゴの前に、忌み嫌う兄ヴィットーレが現われた。ヴィットーレがフェデリーコに取り入ったことで、ウーゴは危機に陥る。次々と災厄がウーゴを襲う。

********************

毒味役となったウーゴの、波乱万丈の半世紀を綴ったエンターテインメント。
この作品はひとえに、歴史では表に登場しない「毒味役」を主人公とした珍奇さと、次々に起きる命のかかった困難な事件を、ウーゴがどう乗り切るのかといったところにあるでしょう。

ウーゴは、幾度も無視されても父親を想う健気な人格者。しかし、洗練されすぎていて、農夫という感じがしなかった。
ミランダはわがままで考えなしだけれど、若いってこんなものかもしれない。若いときは、平気で後先考えないで無謀なことをするよね、としみじみ思ったりして。
ヴィットーレは様々な姿で登場するのですが、忌々しい奴なので読みながらウーゴに加勢してしまった。

16世紀という時代であり、さらに大国に囲まれている地理的状況からいって、コルソーリ市が存続することはかなり難しいと思うんです。フェデリーコは毒殺を恐れるより、隣国からの武力による侵略を懸念すべきでは。外交によって国の安泰を図るのが妥当というもの。
この時代はイタリアの羊毛産業が落ち目となり、イギリスが台頭してきていたといわれるので、フェデリーコの公国が裕福だとは思えないんですよねえ。豊かな国ではないのだから文化的事業に費やす余裕は、普通ならばないはず。
加えて言えば、料理にはとても高価なスパイスが使われていて、フェデリーコような貧しい地方領主は入手するのは難しいのではないのかな。つまり、経済状況や政治状況からいって、フェデリーコのような生活は無理ではないのかと思う。
要するに16世紀のイタリアという現実味が感じられませんでした。
最後まで読ませてくれるのだけれども、イタリアの政治的・経済的状況という実際的な面を省いて、いいとこ取りしたエンターテインメント・・・と割り切るべきかも。でも、そうすると稀覯本を発見して翻訳したという体裁が生きてこない。
仮にイタリアを舞台にしておらず、歴史云々を抜きにもしても、「うーん」という気持ちになっただろうな。毒見役という設定は魅力的なんだけどなあ。(2002/12/3)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。