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たのしいゾウの大パーティー/パウル・ビーヘル

たのしいゾウの大パーティー
パウル・ビーヘル

My評価★★★☆

訳:大塚勇三
カバー画・挿画:パブス・ファン・ウェリ
岩波書店(1992年1月新装版)
ISBN4-03-608280-9 【Amazon
原題:Het olifantenfeest(1973)

収録作:たのしいゾウの大パーティー/おくびょうなムクドリ/世界でいちばんきれいな家/魔女の靴/大男/紙の宮殿


オランダの作家パウル・ビーヘル(1925年生まれ)による童話集。原書の21篇より6篇を収録とのこと。
ビーヘルの童話は豊かな空想からなるメルヘンチックな物語。その空想がクッキリと鮮やかで、ありありと目に浮かぶよう。また、文章にリズム感があって、そのリズムが楽しいという気持ちを掻き立ててくれるような気がします。
出だしはちょっぴり悲しいと思った物語でも、読後にはふんわりと温かな気持ちになれる。ほわっと温かく楽しい気分にさせてくれる童話集でした。

たのしいゾウの大パーティー
サーカス団がやって来ました。子どもたちはゾウがどこにいるのか気になって仕方がありません。いました、大きな灰色のゾウ!でもなんだか変です。
サーカスの団長は大人たちに、みんなが手伝ってくれるのならこの特別なゾウがどんなふうに特別なのか見せてくれると言いました。どう特別なのでしょうか?

********************

よくも悪くも単純明快な幼年向けの童話。表題作としたのは、たんに幼年読者を意識してのことかな。面白くないわけではないのだけれど、私としては{紙の宮殿}を本書のタイトルにした方がよかったのでは、と思うのだけれど。

おくびょうなムクドリ
ムクドリたちが飛ぶ練習をしているのに、クリーだけは飛ぼうとせず、仲間に入ろうとしません。でもクリーは、仲間に入れてもらえなくてもちっとも気にしませんでした。
秋になり、みんなは南へ飛んで行きました。残されたクリーも、南に向かってようやく飛びます。でもクリーはひとりぼっち。しかも迷子になってしまい、とある家の窓辺の小さな穴で眠ってしまいました。目が覚めるとそこは!?

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普通なら努力しない者は報われないのですが、この話は違いました。ですから教訓くささはいっさいありません。結果として、「ちゃっかり者」クリーと言えるでしょうね。

世界でいちばんきれいな家
ある小さな家に、おじいさんとおばあさんとネコが住んでいました。おじいさんは仕事を見つけられず、その間少ない家財道具を売ってお金に換えました。
ついに売るものがネコしかなくなったとき、おばあさんは家を売りました。
おばあさんは紙で家を作りました。紙のカーテン、紙のテーブルとベッドも。それはそれはかわいらしい家でした。でも所詮紙です。家はおばあさんたち共々風に吹き飛ばされて・・・。

********************

最後はめでたしめでたし。楽天家のおばあさんと、作者の軽やかな筆致のおかげで救われるのですが、老夫婦の厳しい生活を描いたかなりシビアなお話。老年雇用と社会保障制度を皮肉った作品と受け取ることができるからです。
老夫婦とネコは偶然と気まぐれによって救われるのですが、それはおばあさんの作った紙の家があったからこそ。おばあさんの手仕事の技が救ったと言えるかも。

魔女の靴
あるところにアレクサンデル・ヨハネス・プッフという男の子がいました。この子は雨が降ると水溜りという水溜りを歩く腕白者でした。
ある日、アレクサンデルは森の奥で靴をみつけました。靴は魔女のもので、その靴を履けるとどこへでも行ける魔法の靴だったのです。
アレクサンデルは靴を手放したくありません。なぜって、その靴を履くと世界中の水溜りを歩けるのから!

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子どものころ、水溜りをピシャピシャ、ときにはバシャバシャ歩きました。ダメと言われるとやりたくなるんですよね。でも、それが世界中の水溜りとなると・・・。
アレクサンデルは願いを叶えるのですが、世界中となると大変です。でも好きなだけ水に濡れたアレクサンデルは、ちっとも後悔していないようです。
靴を盗られた魔女は怒って罰を与えたりしませんでした。そこがいいんですよね。これでアレクサンデルが罰せられでもしたら、面白くなくなるもの。

大男
高い山の麓の村に井戸があり、毎晩山から大男が井戸水を汲みにやって来ました。村人たちは水を汲む音がうるさくて眠れません。しかも翌朝には水はほとんどどなくなっているのです。
村人たちは大男を捕まえてこらしめようとします。大工さんが妙案を思いつき、四度目でやっと大男を捕まえるのですが・・・。

********************

大男をこらしめようとする村人たちですが、逆転劇がお見事。でも大男は悪い人ではなかったのです。それからというもの、村人たちと大男は仲良くなるんです。
大男の言うように、最初から話し合えばよかったのに。話し合いをせず実力行使にでた村人は、やはりよくないですよねえ。

紙の宮殿
足を悪くしてベッドに寝たきりの少女カロリーネは、おばあさんからハサミを貰いました。紙で動物や木や家など、好きなものを切り抜くためです。一週間もするとカロリーネは何でも切り出せるようになり、夢中になってどんどん上達していきました。
ある日、夢の中でカロリーネは、小指よりも小さな男から、三日後の女王様の宴会のために宮殿を切らなければいけないと言われました。宮殿、料理場、舞踏室、踊り手、料理人、従僕、塔、旗など、宴会に必要なものすべてです。
紙の宮殿が出来上がった日、夜中にカロリーネが目を覚ますと!?

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カロリーネは一つだけ切り出さなかったのですが、そこがこの話の要になっています。
夢の中の出来事が現実になる、というのはよくある話ですが、そこにまだ不思議を残している。不思議の中にさらに不思議がある、というところでしょうか。
普通の作家なら足を悪くしたカロリーネに同情をひかせるよう書くであろうところを、カロリーネへの同情をキッパリと拒否しているかのように全く触れていません。
同情をひこうとする意図があれば、子どもは敏感に気づくものです。その点に気づいてしまうと、空想物語が胡散臭いものになり、ガラガラと崩れてしまいます。空想物語はとても脆いもの。この点を押さえているところに、ビーヘル童話の面白さ、楽しさの秘訣があるように思います。(2004/10/7)

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