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血と暴力の国/コーマック・マッカーシー

血と暴力の国
コーマック・マッカーシー

My評価★★★☆

訳:黒原敏行
扶桑社海外文庫(2007年8月)
ISBN978-4-594-05461-8 【Amazon
原題:No Country for Old Men(2005)


メキシコとの国境近くのテキサス州ソノラ沙漠。ヴェトナム帰還兵だった溶接工のモスは、麻薬密売人の銃撃戦の痕に遭遇。現場には取り引きされるはずだった大金の詰まったカバンが残されていた。
モスはカバンを手に入れる。だが、密売人たちはすぐに自分を嗅ぎつけるだろう。彼は妻を実家へ避難させ、自分自身は銃を持って逃亡する。

一方、保安官補が殺され、犯人シュガーが逃走。シュガーはモスを追いながら、行く先々で殺戮劇を繰り返す。そのシュガーには独特の哲学があった。
密売人たちもまたモスを追跡し、シュガーと対立。モスの追跡劇と銃撃戦が繰り広げられ、老保安官ベルは、異常な事態になす術がなく途方に暮れる。

********************

コーエン兄弟監督による、アカデミー賞を受賞した映画『ノーカントリー』(2007,米)の原作。
コーマック・マッカーシー(1933年生まれ)は、『すべての美しい馬』(1992)で全米図書賞と全米書評家協会賞を受賞。続く『越境』(1994)と『平原の町』(1998)の国境三部作で知られるそうです。
国境三部作以来沈黙していたそうで、2005年に本作を発表。 翌2006年に発表した作品では、2007年度ピューリッツァー賞を受賞。

本書は、私には初めてのマッカーシー作品。扶桑社海外文庫だから、エーターテインメント性たっぷりのクライム・ノヴェルだろうと思っていたのですが、確かにクライム・ノヴェルではあるけれども、そこは純文学作家マッカーシー、たんなるクライムでもノヴェルでもなかった。
タイトルの『No Country for Old Men』を訳者は、直訳すると「老人の住む国にあらず」といっています。私は「昔気質の住むに国にあらず」といった方が近いように思いました。
人間としての在り方や、アメリカ社会のあり方を問うているように思います。人間性を問うているのかな。でも、なかなか手強くて、どう受け止めればいいのかわからない。
文体も独特で、説明的な部分はいっさいなく描写が省略されていたりするので、頭の中で前後関係を組み立てなければなりませんでした。読者に考えることを要求する作品だと思います。

ソノラ沙漠はアリゾナとメキシコの国境地帯。この地域については、ゲイリー・P・ナブハンのノンフィクション『雨の匂いのする沙漠』で知ることができます。
アメリカ人でも白人の土地ですが、元々はトホノ・オォトハム族(かつてはパパゴ・インディアン)の土地だったそうです。メキシコに住むトホノ・オォトハム族たちは、自分たちの土地だと主張。土地所有権問題が解決したのかはわかりませんが、ともあれ白人と、先住民とその子孫であるメキシコ人の間で、土地をめぐって対立していたのだそうです。
シュガーは明らかに白人ではなく、白人を侮蔑しているふしがあります。背景にはこの土地独自の民族的対立があるのではないかと思うのですが、そうした部分は表立って書かれていません。

このシュガー、非常に奇怪な人物。その生き方は人生を清算するかのように思えるんですけど。
シュガーの存在は人々を不安に陥れる。彼を知った者は、おそらく自分自身の中にもシュガーのような部分があることに気づいてしまうのでは。
シュガーはいったい何者なのか?それがこの作品を解く鍵ではないかと思うのですが、私には解けません。私はシュガーの論理は好きじゃないんですよねえ。
総じてこの作品は私向けではなかった。どこにも救いがないし、運命論的に感じてしまい、そんな考え方が好きになれなかったんです。読む価値があるかと訊かれれば「ある」と答えますが、私は好きになれなかった。(2008/3/31)

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昔気質の住むに国にあらず

映画『ノーカントリー』を観てぜひ原作も読んでみたいと思っていました。映画のラストシーンの夢の意味や、シュガーのその後など気になることがもりだくさんでした。「シュガーは明らかに白人ではなく、白人を侮蔑している」こういう視点で見直すと、彼の言動がよりわかりやすくなりますね。原作是非読んでみます。ブログでのご紹介に感謝です。

No title

★ETCマンツーマン英会話さん
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

映画『ノーカントリー』は観ていないのですが、結構評判よかったような。
原作との違いはわからないのですが、原作は私にはよく理解できませんでした。どう受け止めていいのかわからなかったんです。
シュガーは白人種ではないと思ったけれど、ひょっとしたら誤読しているかもしれません。うーん、誤読の可能性大だなあ。
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