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魔の山/モリー・ハンター

魔の山
モリー・ハンター

My評価★★★★☆

訳:田中明子
評論社(1978年2月)
ISBN4-566-01140-2 【Amazon
原題:THE HAUNTED MOUNTAIN(1972)


スコットランドの高地地方にベン・マクデュイと呼ばれる山がある。この山は「魔の山」と恐れられていた。「アン・フェルラ・モル」という灰色大人(はいいろおおひと)がいるからだ。アン・フェルラ・モルは全身が石でできていて、その姿を見た者は恐怖のあまり自ら死ぬという・・・。

この地方には英語でいえば妖精にあたるシー族もいる。ただ妖精と違い、気まぐれで怒らせると恐ろしい存在となる。人々はシー族を恐れて「いい人たち」とか「いいおとなりさん」と読んでいた。そして、自分たちの農耕地の一部をシー族との友好の証として彼らに捧げていた。その土地は「いい人の畑(クロフト)」と呼ばれる。

さて、この地方にマカリスターという、若くて偉丈夫だが頑固者の男が住んでいた。
あるとき彼は隣人たちが止めるのも聞かずに、「いい人の畑」を耕しす。そしてシー族の怒りを買い、何度かシー族の怒りを逃れたが、ついに魔の山に囚われの身となってしまう。

7年の後、成長したマカリスターの息子ファーガスは、自分の父親がシー族に囚われていることを知る。そして占い(スキーリー)女から、シー族が崇める闇黒の神々への生贄にされること、父を見張っているのは恐ろしいアン・フェルラ・モルであることを知る。
ファーガスはスキーリー女から知恵を得て、シー族とアン・フェルラ・モルのいる魔の山へと向かう。父の代からの忠実な猟犬アン・クゥ・モルを従えて。

********************

昔話ふうに語られるスコットランド高地地方のフォークロア的作品。古代ケルト世界の物語。児童書扱いになっていますが、大人でも充分に堪能できます。
訳者あとがきによると、スコットランド北西部のケルンゴーム山脈にベン・マクデュイ山が実在し、その谷間に住むマカリスターたちは高地人(ハイランダー)のようです。

自らが汗して耕した土地は人間のものであり、土地は命でもある。誰にも命の一部を取り上げることはできない。そして、何者にも屈せず困難を乗り切ろうとする姿がこそが人間なのだと作者は語っているようです。正直で額に汗して働くこと、なによりも気高い心が重要であると。
この作品の素晴らしいところは、大地に属する人間の逞しさ雄々しさが、おそらくは誰にも真似できないであろう力強い文体で描かれていることです。
虚飾や装飾を剥ぎ取った簡潔で贅肉のない文体は、内容にふさわしく力強い生命力が漲っているかのよう。大地(自然)に生きる根源的な人間らしさをあらわすのにふさわしい。都会化された現代の作家にはまず書くことのできないであろう文体ではないでしょうか。

キリストの力をもってシー族を追い払う様は、土着信仰教からキリスト教への移行化への途中過程ですが、作者の意図するところは、キリスト教の下で失われつつある民族固有のフォークロアと、民族が持っていた人間としての力強さを伝えることにあるのではないでしょうか。作者の祖国スコットランドへの想いと、祖国と民族の独自性を伝えようとする姿勢が感じられました。(2001/3/30)

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